▲毎週土曜日朝、全羅北道地域で放送されている週間主要ニュースの画面に出ている中国語とベトナム語の字幕。写真=全羅北道庁

 全羅北道南原市在住で、国際結婚によりベトナムから移住してきた女性、イ・ダヘさん(33)は毎週土曜日の朝になるとテレビの前に座って必ずニュースを見る。ローカル地上波放送局で1週間の主要ニュースをまとめ、母国語のベトナム語字幕を付けてくれるからだ。ダヘさんは「14年間、韓国語を一生懸命勉強して、ある程度は意思疎通できるようになったが、ニュースは時事用語や政治用語が多いので理解するのが難しい」「1週間に一度でも母国語で韓国のニュースを見ることができるので、きちんと理解できるし、移住者たちも尊重されている感じがするから、うれしい」と語った。

 全羅北道では2019年からローカル放送局と共に毎週土曜日、ベトナム語と中国語のニュース字幕サービスを提供している。全羅北道庁のキム・ムンガン多文化支援チーム長は「多文化人口が徐々に増えていることから始めたサービス」「結婚による移住者の出身国の70%が中国とベトナムなので、この両国の言語を字幕にした」と説明した。

 江原道楊口郡亥安面では、昨年からゴミ分別に関する説明を英語・日本語・中国語・タイ語・ベトナム語・フィリピン語の6カ国語で出している。ゴミの分別の仕方や、規定のゴミ袋を使用せずに不法投棄すると過料が課されるという内容だ。亥安面事務所のイ・ジャヨン係長は「この面内には結婚で移住してきた女性や外国人労働者が多いが、韓国語が分からず、分別などの説明がよく理解できないケースがあった」「こうした人々が徐々に増えていることから、私たちが発想を変えて、彼らの母国語で説明を始めたものだ」と語った。全羅北道茂朱郡茂朱邑など、ほかの自治体でもこのような多言語による説明を始めている。

 最近、地方の郡庁では「通訳・翻訳機」が必需品になっている。全羅南道長城郡では今年4月、郡庁の窓口に65カ国語でサービスが可能な音声認識通訳・翻訳機を用意した。外国人が母国語で話すと、韓国語に通訳してくれる機械だ。長城郡では外国人労働者や多文化移住女性約1000人が暮らしている。同郡の関係者は「言葉で意思疎通ができないため、苦情にきちんと対応できず、そのほかの住民生活関係の処理も遅れた」「機械の価格は約60万ウォン(約5万8000円)だが、外国人住民の反響はいい」と話した。慶尚南道固城郡も今年初め、通訳・翻訳機を導入した。ベトナム・スリランカ・インドネシアなどから来た外国人が徐々に増えているからだ。この5年間の人口は固城郡で約4000人、長城郡で約2000人減っており、「消滅危機地域」となっている。

 地方の小学校では「韓国語」の授業が始まっている。全羅南道霊岩郡の大仏国家産業団地に近い三湖西小学校では、韓国語が苦手な外国人児童のために韓国語学級を別途に開いている。授業を受けているのはロシア、エジプト、ウズベキスタン、イエメンから来た親を持つ児童たちだ。同校の全校児童340人のうち、多文化家庭の児童は50人。韓国で生まれた多文化家庭の児童たちには、逆に結婚により移住してきた母親の「母国語」を教えることもある。親の出身国に応じてベトナム語やカンボジア語の授業を行うということだ。慶尚北道教育庁職員のハン・イクヒさんは「韓国で生まれ育った子どもたちだが、母親のルーツである国の言葉を学び、幼いころから2カ国語ができるグローバルな人材で育てようという趣旨だ」と説明した。

 行政安全部が先月、人口減少地域に指定した全国89カ所の自治体の人口は、2015年の531万9165人から昨年は498万8175人へと5年間で6.2%減少した。同期間の多文化人口は10.6%(12万7355人→14万821人)増加した。全羅北道庁関係者は「若者がいなくなり、人口まで減って、事実上消滅の危機を迎えている地方で、必須人材を満たしてくれるのは外国人労働者と結婚による移住者の女性だけ」と語った。

イ・ヘイン記者

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