政治総合
「教皇が訪朝の意向?」…ローマ教皇庁の発表に内容なし
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は30日(現地時間)、イタリアのローマで開催されたG20(20カ国・地域)首脳会議の歓迎レセプションでバイデン大統領と立ち話をした。集合の記念写真を撮影する直前だったため、話ができた時間は2-3分ほどだった。韓米両首脳が対面で顔を合わせるのは今年6月に英国で開催されたG7(先進7カ国)首脳会議以来、4カ月ぶりだ。文大統領は前日にフランシスコ教皇と会談したことをバイデン大統領に伝え「教皇は韓半島平和のために祝福し、(北朝鮮からの)招待状があれば北朝鮮を訪問する意向を示した」と伝えた。通訳を交えて一言二言程度のやりとりしかできなかったが、その場で北朝鮮の話を最初に取り上げたのだ。文大統領は他の外国首脳にも主に北朝鮮関連の話題を取り上げたという。青瓦台(韓国大統領府)がこれら一連の内容を強調して伝えた。
文大統領と会ったバイデン大統領は立った状態で文大統領の肩に手を掛けるなどスキンシップを取りながら「文大統領が来たのでG20も成功するだろう」と声を掛けた。文大統領は「昨日教皇に会ったと聞いた。私もお会いした」とした上で、教皇が訪朝の意向を示したことを伝えた。これにバイデン大統領は「良い知らせだ」「(韓半島問題解決に)進展をもたらしている」と応じた。韓米両首脳はこの日は立ち話をしただけで会談などは行わなかった。
28日にローマに到着した文大統領は29日にバチカンの教皇庁を訪問し、フランシスコ教皇に訪朝の意向を打診することでローマでの日程をスタートした。文大統領は「機会のあるときに教皇が北朝鮮を訪問してくだされば、韓半島平和のモメンタム(推進力)になるだろう」との考えを伝え、これに教皇は「招待状があれば喜んで行く」と応じた。しかし教皇庁のプレスリリースに訪朝関連の内容はなかった。青瓦台はブリーフィングで教皇の訪朝の意思を強調したが、教皇庁の公式発表にはこれに関する言及は全くなかったのだ。青瓦台は以前に文大統領が教皇庁を訪問した2018年にも教皇が北朝鮮に行くかのような説明を行ったが、その後教皇の訪朝は実現していない。「教皇の儀礼的な返事に青瓦台が自分たちの希望を付け加えて拡大解釈した」との指摘もある。
文大統領は3泊4日のローマ滞在中、他の首脳と会談した際にも主に北朝鮮問題や韓半島政策への支持を訴えた。フランスのマクロン大統領との会談後、青瓦台は「文大統領は南北、米朝対話の早期再開の重要性を強調し、北朝鮮との対話再開に向け韓米両国がさまざまな努力を傾けていることを伝えた」と説明した。文大統領は30日に行われた欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン執行委員長との会談、さらに31日に行われたドイツのメルケル首相、オーストラリアのモリソン首相との会談でも韓半島の平和について説明した。
ローマでは韓国外交部(省に相当、以下同じ)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官と米国のブリンケン国務長官との会談も行われた。韓国外交部は「終戦宣言を含む韓半島平和プロセスの早期再稼働について真剣に意見交換した」と説明したが、米国務省のプレスリリースには「両長官は韓半島の完全な非核化に向けた共同の義務を強調計画した」と記載されているだけで、終戦宣言についての内容はなかった。韓国統一部の李仁栄(イ・インヨン)長官も国連世界食糧計画(WFP)のデイビッド・ビズリー事務局長と「北朝鮮の食糧不足に伴う人道協力の方策」について意見交換した。
韓国の政界からは「文大統領と韓国政府は外交力を終戦宣言にばかり集中しているため、国際社会の流れとずれが生じかねない」との懸念も浮上している。コロナ後の世界経済への対応といった大きな懸案も北朝鮮問題の後回しにされているのだ。