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漫画本を集めていた子どものころから『ドラえもん』の監督夢見ていた
渡辺歩さん(55)は人気アニメ『ドラえもん』シリーズやアニメ映画『海獣の子供』(2019年)などの作品で韓国でもおなじみの日本のアニメーション監督だ。22日に開幕する今年の第23回富川国際アニメーションフェスティバルの審査委員長を引き受けて訪韓した。渡辺監督は21日の本紙インタビューで、「これまで生きてきて初めての経験を3つすることになりました」と笑った。初めて韓国に来て、初めて審査委員長になり、初めて韓国メディアとインタビューをすることになったというのだ。
ドラえもんは1969年から漫画やテレビシリーズ、劇場版アニメなどとして製作され、50年以上愛されている日本の「国民的キャラクター」だ。韓国でもテレビ放映や劇場上映を通じてファンが少なくない。渡辺監督は「偶然ですが、ドラえもんと私の誕生日は同じです」と笑った。原作漫画のドラえもんは2112年9月3日に未来の工場で誕生した猫型ロボットという設定になっている。タイムマシンに乗って少年「のび太」(韓国でのキャラクター名:ノ・ジング)の家にやって来て、のび太の悩みを聞いてくれる優しい親友代わりになる。渡辺監督は「小学生のころからドラえもんを連載している漫画雑誌や単行本を買って集め、漫画家やアニメーターになりたいという夢をはぐくんできました」と語った。
渡辺監督は代々木アニメーション学院を経て1987年に日本の作画スタジオに入り、アニメの仕事を始めた。デビュー作も『ドラえもん』だった。「入社して初めて担当した作業が、部屋でのび太が引き戸をスッと開けるシーンでした」という。
2011年にフリーランスの監督として独立するまでの20年間で、『ドラえもん』テレビシリーズ30本と劇場用中編7本、長編2本の作画・演出を手がけた。『ドラえもん』のファンだった子どもが『ドラえもん』シリーズの監督になったのだ。渡辺監督は「ドラえもんとのび太の友情を基本的な骨格としながらも、恐竜や植物、SFや歴史など、さまざまなテーマを開発して、常に新しい物語を生み出してきたことが、このシリーズの長寿の秘訣(ひけつ)です」と語った。
2011年の独立以降は学園スポーツアニメ『メジャーセカンド』、宇宙飛行士の夢に挑む兄弟を描いた『宇宙兄弟』、ファンタジー作品『海獣の子供』など、さまざまなジャンルに挑戦してきた。渡辺監督は「固定された方向性を決めず、できるだけ自由に多くのテーマを描きたいという夢がありました」と話す。「琉花」という少女が子どものころの思い出の水族館で不思議な双子の少年「海」と「空」に会って体験する出来事を描いた『海獣の子供』により富川国際アニメーションフェスティバル大賞を昨年受賞し、その縁で今年の審査委員長を務めることになった。渡辺監督の新作『漁港の肉子ちゃん』も22日に同フェスティバル開幕作として韓国で上映される。監督は「作品に登場する母娘間の情を通じ、生きることの喜びと将来の希望について伝えたいと思いました」と語った。
渡辺監督もポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』(2003年)や『母なる証明』(2009年)のDVDを買い集め、アイドルグループTWICE(トゥワイス)やBTS(防弾少年団)の歌を聞く韓流ポップカルチャ-・ファンだ。渡辺監督の作品に参加している韓国人アニメーターも30人余りに上る。渡辺監督は「日本やディズニーと仕事をする韓国人アニメーターたちの技術レベルは既に世界的なものです。常に誠実さや熱意が感じられます。絵のスタイルやアイデンティティーで固有の様式を確立すれば、衝撃的な作品が間もなく出てくるでしょう」と語った。
金性鉉(キム・ソンヒョン)記者