文在寅政権
中国が加入申請したから? 韓国政府「CPTPP加入申請、決定が近づいた」
韓国政府が「環太平洋連携に関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入申請の決定が近づいた」と明らかにした。CPTPPの前身であるTPPへの加入を2013年に検討し始めてからすでに8年が過ぎた。韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部(省に相当、以下同じ)長官は18日「もう時間がない。決定は最終段階だ。『加入する、しない、するならいつする』までを含む決定は10月末か11月初めには出さねばならない」と述べた。
韓国政府は今月25日に予定されている対外経済長官会議でこの問題について検討する予定だ。韓国政府内の雰囲気は加入申請の方向に流れている。洪副首相は「企画財政部長官としては加入申請をすべきと考えている。ただし産業通商資源部、農林畜産食品部、外交部、国家安全保障会議(NSC)に至るまで調整が必要な問題だ」とコメントした。
■世界のGDPの13%を占める巨大FTA
CPTPPは世界最大規模の経済ブロックを目指す環太平洋連携協定(TPP)から米国のトランプ政権が離脱したことを受け、2018年に日本を中心とするオーストラリアやメキシコなどの11カ国が発足させた経済協力体だ。加盟国の国内総生産(GDP)を全て合わせると世界GDPの13%、貿易規模は15%に達する。
これまで韓国政府は「米国が抜けた経済協力体には積極的に参加する理由が相対的に小さい」「CPTPPの実質的な中心である日本との関係が悪化している」などの理由で加入は難しいと考えてきたため、決定を先送りしてきた。昨年末に中国中心の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に加入したこととは対照的だ。当時、韓国政府はCPTPPへの加入については留保的な態度を示していた。
■「中国が申請したので韓国も申請するか決める」
韓国政府がCPTPPへの加入決定を急ぐようになった背景の一つが中国だ。洪副首相は「中国と台湾が突然加入申請書を提出したのは、韓国が検討を行うに当たり考えてもいなかった重要な変数だ」と述べた。
中国は先月16日に突然CPTPPへの加入を申請した。CPTPPに加入するには加盟する11カ国全ての同意を得なければならないが、「市場の開放性」「国営企業への補助金」「デジタル貿易」「労働・環境分野の規範」が相対的に高くない中国がCPTPPのドアをたたいたのだ。仁荷大学の鄭仁教(チョン・インギョ)教授は「中国もCPTPP加入申請書を出したのだから、韓国も出せないことはないと考えたようだ」との見方を示した。韓国政府関係者の説明によると、「最近は英国などCPTPPへの加入を打診している国が増えていることもあり、今のこの時期を逃せば加入交渉が複雑になりかねない」との見方も考慮されたという。
中国についてはCPTPP加盟国の日本とオーストラリアが反対の意向を示しているため、中国の加入が実現するかは不透明だ。しかし一部では「中国はCPTPPをもはや米国など欧米による中国けん制の手段とは見なしていない。これが中国のCPTPP参加申請によって確認できたため、韓国政府の加入申請決定も前倒しできる」との見方も出ている。政治的な考慮が作用したということだ。
洪副首相は「日本は現在CPTPPの議長国で、福島県産の海産物規制を理由に韓国の加入には否定的だ。しかし来年1月には議長国がシンガポールに交代する」と説明した。日本はこれまで韓国のCPTPP加入に否定的な考えを示してきた。韓国政府関係者は「CPTPP加盟11カ国とはこれまで非公式の協議を行ってきたが、日本だけが否定的だった」と説明した。ただその一方で「来年議長国がシンガポールに代わっても、加入交渉が順調に進むとは考えにくい」との見方も根強い。
■通商外交の実績があまりない文在寅政権
「CPTPPへの加入申請は外交政策の実績作りでは」との指摘もある。まず金大中(キム・デジュン)政権は2003年にチリとの自由貿易協定(FTA)を妥結し、これが自由貿易協定の先駆けとなった。さらに盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は米国とのFTA(2007年)、李明博(イ・ミョンバク)政権は欧州連合(EU)とのFTA(2010年)、朴槿恵(パク・クンヘ)政権は中国とのFTA(2015年)を締結するなど、いずれも大きな規模のFTAに署名した。これに対して現政権による通商領土の拡大はパナマ、コスタリカ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグアの中米5カ国とのFTA締結にとどまっている。
韓国政府はこれまで「米国が再び参加しない限り、CPTPPに加入しても実益はさほど大きくない」と判断してきた。CPTPP加盟国のうち日本とメキシコを除けば、韓国はすでに一定レベルの2国間協定を締結しているからだ。対外経済政策研究院のソ・ジンギョ研究員は「新たな実益がさほど大きくないとの理由で加入の時期をチェックするだけだったが、今が適切な時期と考えられる特別な事情や環境の変化があったとは思えない」と指摘した。
金正薫(キム・ジョンフン)記者