地方の四年制大学を卒業したピョン・ジュンヒさん(28)の一日は午前10時30分に始まる。ピョンさんは7級公務員試験を受験したものの不合格だったため、目標を変えて今年4月から警察公務員採用試験に向けて準備している。

 ピョンさんは午前11時から午後1時までの2時間、警察公務員の体力試験に備えてトレーニングする。その後、昼食を簡単に済ませ、午後2時から7時までは自転車に乗って料理宅配サービス「クーパンイーツ」の配達員として働く。オートバイよりは安全で運動にもなるため、自転車を選んだ。

 午後7時から午後10時まではソウル・蚕室にある自習室でアルバイトだ。クーパンイーツで夜遅くまで配達した方が稼ぎはいいが、体力的に厳しいと考え、自習室でアルバイトすることにしたという。アルバイトが終わると、その自習室で深夜1時30分まで警察公務員試験に向けて勉強する。ピョンさんは実家で両親と暮らしているが、自分の部屋がないため、家では夜遅くまで勉強することができないのだ。勉強を終えて深夜2時ごろ家に帰り、眠りに就く。これがピョンさんの一日だ。

 21年度の第2回警察公務員試験(巡査)の競争率は20.3倍だった。試験対策に専念しても合格は容易ではない。それなのにピョンさんが1日8時間もアルバイトに勤しむのはなぜだろうか。

 ピョンさんは実家の家賃を自身のアルバイト代から支払っている。家賃は月額60万ウォン(約5万7700円)。体力試験に備えてスポーツジムにも通っており、ジムの月会費も6万ウォン(約5800円)ほど掛かるという。筆記試験のためのテキスト代やオンライン講義の授業料も毎月10万ウォン(約9600円)は掛かる。食費と通信費は合わせて約30万ウォン(約2万8900円)払っている。クーパンイーツでの稼ぎは1か月およそ80万ウォン(約7万7000円)。自習室のアルバイトで1か月40万ウォン(約3万8500円)稼いでいるためピョンさんはかろうじて生活費と就職準備費用を両方まかなえるという。

 しかし先日、ピョンさんが働いていた自習室は、コロナ禍で利用者が減少したため閉鎖に追い込まれた。これはピョンさんにとっては大きな問題だった。クーパンイーツでの収入だけでは生活費と就職準備の費用を両方まかなうことはできないからだ。ピョンさんは「就職準備のためにまず金を稼がないといけないなんて、あきれてものも言えない」と話した。

 若年層の就職難が長期化し、「就準準生」という新造語が登場した。就職準備に向けて準備する学生という意味だ。就職に向けた資格試験代や就職予備校の受講料を工面するためにアルバイトで金を稼ぐ学生のことを「就準準生」と呼ぶ。

 韓国のアルバイト求人情報サイト「アルバ天国」が今年7月、20代の784人を対象にアンケート調査を実施したところ、大学生の10人に3人が自身のことを「就準準生」だと答えた。四年制大学に通う大学生では、この割合が53.5%に増える。

 「就準準生」にならざるを得ない理由は簡単だ。就職の準備に多額の費用が掛かるからだ。同じアンケート調査で、就職準備期間に必要な費用は毎月平均56万8000ウォン(約5万4600円)だった。適性検査や語学、資格取得に必要な費用、試験の受験料、模擬面接の費用、就職準備期間の生活費などの合計だ。

 就職準備に必要な費用は増え続けている。先日、就職情報サイト「ジョブコリア」が就活生539人に「面接準備に向けた予想費用」を尋ねたところ、平均48万ウォン(約4万6200円)だった。2016-19年の調査では18万-23万ウォン(約1万7300-2万2100円)だったが、わずか数年で2倍に膨れ上がったのだ。

 非対面での採用が人気を集めていることから、ウェブカメラやノートパソコン、照明器具、間仕切りといったオンライン面接に必要なツールまで就活生が購入しなければならない。最近では若者の間で「無銭無業」という新造語まで登場した。お金がなければ就業(就職)もできないという意味だ。

 大学4年生のヤン・ユギョンさん(23)も、就職準備のためにアルバイトで稼いでいる。ヤンさんは、英語のTOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)対策予備校の受講料とTOEICの受験料を工面するために、週に1日だけカフェでアルバイトをしている。大学の授業とTOEICの予備校の双方をこなさなければならないため、アルバイトに時間を割くことはできないという。

 TOEIC予備校の受講料は月20万ウォン(約1万9200円)ほど。TOEICの受験料も1か月に10万ウォン(2回分)だ。カフェのアルバイト代は全てTOEIC関連に使っている。

 ヤンさんは「大学の授業が終わって夕方からTOEIC予備校に行くと、夜10時過ぎになるが、いつも『こんなふうに生活していて就職できるんだろうか』という思いが押し寄せる。大学とTOEIC予備校、アルバイトを全てこなすことよりも、就職に対する不安の方が精神的につらい」と話した。

 このような状況でも、若者の失業問題に対する政府の認識は甘い。洪楠基(ホン・ナムギ)経済副総理兼企画財政部長官は13日、米国への出張の際、自身のフェイスブックに「全ての年代の雇用率が2か月連続で上昇する中、今月も若者層の指標回復が際立っている」「若者の就業指数が7か月連続で10万人以上増え、失業率と拡張失業率は大幅に下落した」と強調した。

 これは9月の青年失業率が5.4%だったことを念頭に置いたものだ。今年初めまで青年失業率は10%台だったが、これがほぼ半減したため、政府が青年失業問題に十分に対応したと自画自賛しているわけだ。

 洪副総理の自画自賛は、ピョンさんやヤンさんのような「就準準生」の現実を全く分かっていない別世界の声だ。失業統計には、就職をあきらめた人や「就準準生」は反映されない。就職準備のために金を稼ぎ始めた20代の若者層が大半なのに、政府はそれを自分たちの功績だとアピールしているようなものだ。

 延世大のソン・テユン教授(経済学科)は「就職の難易度が高くなり、就職に向けて準備しているものの求職活動をしていない一種の潜在的失業者が急速に増えた」として「就職のための試験勉強をしながらアルバイトをする学生のように、統計には失業者として反映されない潜在的な失業者が多い」と指摘した。

 

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