韓国地場のスタートアップ企業が世界で最も権威がある人工知能(AI)半導体性能コンペティションで絶対的王者である米エヌビディアに勝った。韓国はメモリー半導体分野で圧倒的な世界1位だ。しかし、AI半導体など高性能システム半導体分野では目立った成果を上げられていなかった。そんな不毛の地から世界のテクノロジー市場に挑戦できるスタートアップ企業が登場した。

 半導体スタートアップのフュリオサAI(Furiosa AI)は22日、同社初の半導体試作品「ウォーボーイ(Warboy)」がAI半導体ベンチマーク(性能テスト)大会である「MLパーフ(MLPerf)」でエヌビディアに勝ち、競争力を立証したと発表した。MLパーフはグーグル、マイクロソフト、サムスン電子、スタンフォード大学、ハーバード大学など大手テクノロジー企業と大学が設立した非営利団体MLコマースが毎年実施している性能テストで、AI半導体の性能評価では最高の信頼性を持つ。写真、映像から特定の物体を選び出す能力、音声認識能力、テキスト理解能力、商品推薦能力など8分野で優位を争う。

 AI半導体は与えられた演算を順番に高速処理する通常の半導体とは異なり、人間の脳のように数十から数千の演算を同時に処理できるように設計されたチップだ。今年のMLパーフではフュリオサAIの半導体が推論に相当するイメージ分類、物体検出の2部門で過去数年間世界最強として君臨してきたエヌビディアよりも高いスコアを獲得した。半導体工学会の会長を歴任した鄭徳均(チョン・ドクキュン)ソウル大碩座教授は「フュリオサAIの成果は韓国のシステム半導体の歴史に画期的なマイルストーンを打ち立てたものだ」と評価した。

 フュリオサAIのウォーボーイは人間の目と脳の役割を果たす半導体だ。コンピューターに入力される数多くの写真と映像データを分析し、そこから特定の人物や事物を探して分類する優れた能力を備えている。フュリオサAIは大容量イメージ・映像を処理するデータセンター用サーバーコンピューター市場を主に攻略し、自動運転車への搭載も計画している。同社のペク・ジュンホ代表は「ウォーボーイは自動運転と映像分析、メタバース(三次元仮想現実)技術に必ず必要なAI半導体だ。来年上半期にサムスン電子に委託して量産を開始する」と説明した。

 2016年に囲碁の対局でイ・セドル九段に勝利したグーグルのAI「AlphaGo」は数百個の中央処理装置、グラフィック半導体、サーバーで構成するコンピューターシステムだった。これに対し、AI半導体はAlphaGoの性能を単独のチップセットで具現するものだ。それほど設計、製作が困難で、世界の大手テクノロジー企業が巨額の投資を行っている。

 ペク代表は「今回のコンペティションを通じ、我々が世界市場に通用する技術と製品を持っていることを全世界に知らしめたことに大きな意味がある」と述べた。実際にAI半導体を開発している世界の企業40社余りで今回のコンペティションに製品を出品したのは、エヌビディア、クアルコム、セントア(Centaur)、フュリオサAIの4社だけだった。IT業界関係者は「製品性能が完全に公開される大会で競争できるほどの技術を持つ企業はそれほど少ないということだ」と話した。

 フュリオサAIはサムスン電子、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)で半導体設計分野の研究員を務めたペク代表が2017年に創業した。サムスン電子だけでなく、グーグル、アマゾンのような大手テクノロジー企業出身の半導体エンジニア約70人が集まり、AI半導体のチップ開発だけに全てを投入した。AI半導体分野はリスクが大きいが、人材構成に可能性を見いだした投資家が支援に乗り出した。ペク代表は「米国で半導体設計スタートアップブームが起きたことも後押しとなった」と話した。

 フュリオサAIは今年5月にはネイバー、DSCインベストメント、韓国産業銀行などから半導体スタートアップとしては最大規模となる800億ウォン(約75億円)の投資を受けた。ペク代表は「今後グローバル市場で競争力を持つAI半導体を発売する計画だ。2023年上半期を目標として、次世代チップの開発に入っており、いつかはエヌビディアを超え、世界トップのAI半導体企業になる」と抱負を語った。

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