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習近平主席の「文化大革命」…K-POPにとっては好材料
「中国政府が選んだ望ましいアイドル」
インターネット上では最近、こうした内容の書き込みや写真が拡散されている。しかし、これはフェイクニュースだ。このニュースに登場する、ひげを生やして屈強なルックスの男性3人組は中国のオーディション番組『青春有你3(Youth With You S3)』の出演者たちだ。
写真のタイトルはフェイクだが、この記事の内容には根拠があった。中国の放送規制機関である国家広播電視総局(国家ラジオテレビ総局)が今月2日、放送・芸能関連規制を発表した際、「娘炮(ニャンパオ)などゆがんだ美的基準を決然と根絶させる」と発表した。娘炮とは、マッチョ(男性的)とは対照的な、女性のような男性のことを指す。同局はまた、「オーディション番組そのものも廃止する」と発表した。
中国政府がこのほど打ち出した芸能界規制措置は▲芸能界ゴシップ禁止 ▲体制に反する芸能人の活動制限 ▲ファン活動を助長する放送の廃止 ▲過度のファン活動の禁止などだ。この規制によると、化粧をして、派手なファッションや女性のような容姿を持つ男性芸能人は活動できなくなるという。ファンたちも好きな歌手のための誕生日プレゼント資金集めや、1人1アルバムを超える購入が不可能になる。これに関する最初の措置として、韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)ジミンやEXOセフンらの中国版ツイッター「ウェイボー(微博)」上にあるファンクラブ・アカウントが21件停止された。
日本のNHKはこれを「習近平指導部はこのところ急速に成長する巨大IT企業への統制を強めており、今回、芸能界への統制も強化することで、体制のさらなる引き締めを図るねらいがあるものと見られる」と分析した。米CNNは「習近平政権はかつての文化大革命のように大衆文化の検閲を通じ、若年層の社会主義離脱を取り締まろうとしている」と解釈した。ニューズウィーク日本版は最初から「『習近平版文化大革命』の発動が宣言された」という見出しを付けた。日本経済新聞は「中国当局が貧富の格差を縮める『共同富裕(共に豊かになる)』への取り組みを強め始めた」「芸能人が標的になった可能性がある」と分析した。
香港紙サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)は「このような中国政府の規制はK-POP産業に影響を与えるだろう」と分析した。今年7月のK-POPアルバム輸出額は合計2600万ドル(約28億6000万円)だが、中国の売上高はその30%未満の825万ドル(約9億円)だった。
しかし、韓国の芸能プロダクション各社は「思ったほど大きな影響はないだろう」と見ている。
K-POPの海外売上高は大きく分けて放送・コンサート・アルバム販売に分かれる。このうち、放送は2016年の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)設置による限韓令(韓流禁止令)時に既に阻まれているし、コンサート収益は昨年から新型コロナ禍で実質的にゼロだ。ある芸能プロダクション関係者は「既に限韓令の時にチャイナリスクを経験して以降、K-POPファンを米国やヨーロッパ、東南アジアなどに拡大・分散させる戦略は最終段階にある」と語った。
むしろ長期的な観点からすると、こうしたことは好材料と見られている。これまで韓国国内の業界の懸念は、中国のオーディション番組を通じた「C-POP(チャイナ・ポップ)」の誕生だった。だが、今回の中国の措置は、国内外を問わず芸能産業そのものを規制するため、C-POP誕生の可能性が大幅に下がったということになる。
ある芸能プロダクションの役員は「北朝鮮でもこっそり見ているのに、政府に規制されたからといって、ファンの好みが変わるだろうか」「K-POPがさらにすそ野を広げ、質的成長をするチャンスだ」と語った。
イ・ヘウン記者