中国・北京で小学生の子を持つ張さん(38)は昨年、毎年11月11日恒例のオンラインセール「双十一」で小学校2年生の子どものために2年分のオンラインによる英語教育の受講券2万元(約34万円)相当を購入した。定価よりも3割安く買えたので喜んでいた。しかし、中国当局が先月、学習塾による教育を事実上禁止すると表明したことで紙切れになってしまった。

 張さんは本紙の取材に対し、「サービスが継続されるか分からないので返金を求めた。現在はマンツーマンの課外教師を探している」と話した。張さんは妻と共稼ぎで、マンションも保有しており、自らを中産階級だと考えている。張さんは「課外の費用もかさむが、良い先生を探すのも容易ではない。今は競争が激しく、民間教育がなくなるはずがない」と話した。

 中国共産党と国務院(中央政府)が7月24日、国語、英語、数学などの学科科目を教える教育機関による営利追求を禁止する措置を発表し、反発が起きている。子どもを名門の中高校、大学に進学させるために資金を工面してきた中産階級の間で特に不満が大きい。中国で中央政府の政策に公に反対世論が高まるのは異例だ。

 中国メディア「観察者網」の元主筆でジャーナリストの馬前卒氏は今月1日、インターネット配信を通じ、「政府が教育企業による民間教育サービスを中断させたとしても、中国人は来月になればさまざまな個人的な教育形態をつくり出すはずだ」と指摘した上で、「政府は学校・地域間の教育格差がどれほど大きいかを公開し、数年以内にどのように北京市(中心部)の海淀区と西部山間地域の教育格差をなくすのか、まずスケジュールを提示すべきだ」と訴えた。海淀区には名門大学が密集しており、教育熱が高いことで知られる。馬氏の動画には6万5000人以上が賛同した。

 中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」でも露骨に政府の政策を批判する書き込みが少なくない。あるネットユーザーは「金持ちは今も月に4万元をかけて家庭教師を雇うが、一般人はどうするのか。結局講師の質が不透明な闇市場に殺到することになる」と嘆いた。別のネットユーザーは「ピラミッドの最上位にいる人がエリート教育を享受し、低所得層の子どもたちを安価な労働力として使おうとしている」と批判した。

 中国政府は民間教育の抑制を通じ、保護者の教育費負担を軽減し、出生率を引き上げると説明した。しかし、中国の親たちの教育熱は高く、親に塾や習い事に通わせられる子どもは「鶏娃(ジーワー)」と呼ばれる。まるでニワトリの生き血を注射して元気を注入する民間療法のように、懸命に塾通いする様子を指す流行語だ。中国では塾通いがすっかり定着しており、今回のような政策を講じても、結局は「鶏娃」の親たちによる競争を引き起こすだけではないかと懸念されている。2017年の大手銀行HSBCによる調査によれば、中国の保護者で塾通いをさせているか、過去にさせていたと答えた人は93%に達し、世界平均(63%)に比べ30ポイントも高かった。

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