■民間の領域縮小、メディアをランク付けする意図

 韓国で広告出稿の根拠となるメディア影響力調査は民間機関であるABC協会が実施してきた。政府はそれを政府傘下の言論振興財団に任せ、メディア市場に直接介入しようとしている。言論振興財団は文化体育観光部傘下の機関で、財団の理事長も文化体育観光部長官の答申で大統領が任命する。今月8日、黄熙(ファン・ヒ)文化体育観光部長官がソウル光化門の政府庁舎で「ABC部数調査の活用中断」を発表した席にも表完洙(ピョ・ワンス)言論振興財団理事長が同席した。言論振興財団は政府のさまざまな広告業務を代行し、新聞や放送局と直接接触する広告代理店の役割を果たしている。そんな機関に今後はメディアに対する評価業務まで任せるというのだ。

 これまで政府は至る所で新聞市場に直接介入し、メディアのランク付けを試みてきた。文化体育観光部は今年3月、ABC協会に部数調査の標本となる支局(販売店)の選定過程に公務員や言論財団関係者、消費者団体、学者などの第三者が立ち会うことを求めた。しかし、純粋な民間団体であるABC協会が活動している他国でそうした要求が受け入れられた例はない。

 与党議員は公務員に新聞販売店の調査権を与える法案を提出したほか、いわゆる「メディアバウチャー」を国民に支給し、メディアの影響力を測定する「公民参加を通じた言論影響力評価制度」の導入を目指す「メディアバウチャー法」まで提案した。国民が自分が好むメディアにメディアバウチャーを提供し、それに基づき政府広告を出稿する制度だ。

 しかし、米国、フランスをはじめとする大半の国々ではABC協会など民間団体が中心となり、メディアの影響力を評価している。有料部数の認定範囲も韓国、英国、スウェーデンなどは購読料の50%までを有料部数と認めているのに対し、米国では1部当たり1セントでも受け取れば有料部数と認めるなど各国の条件に沿って、民間が自発的に決定している。国際ABC連盟も政府の介入を最小化するため、メディアと広告主、広告会社が参加する非営利組織を設立し、メディアの影響力調査を行うことを勧告している。

■政府が新聞評価基準づくり 表現の自由低下懸念

 ABC協会は「支局(販売店)は支局長(店主)個人の営業場所で、新聞社も何部を配達しているか把握しにくい」とし、「文化体育観光部の職員と外部の人物が実施した設問調査とインタビューだけでABC協会の部数調査に問題があるとする主張は受け入れ難い」と反発した。成均館大法学専門大学院のチ・ソンウ教授は「ABC制度は客観的に部数を把握することで、メディアに対する政府の影響力を制限しようと創設したものだ。(今後)政府が新聞を評価する基準を設定し、その影響力を直接数値で把握すれば、表現の自由を低下させかねない」と指摘した。

 また、政府が直接購読率、閲読率調査を通じ、新聞メディアの影響力を把握すれば、主要紙ではない零細メディアは実態把握すら不可能になると予想される。ABC協会には現在、新聞社912社を含む1592社が加盟している。

 専門家は現在のABC制度に改善点がないわけではないが、だからといって政府が直接メディアの影響力を評価するというのは世界的に例がなく、ABC協会のような民間機関を設立した趣旨と精神に反すると批判している。鮮文大言論広告学部の黄懃(ファン・グン)教授は「ABC制度自体に問題があるのではなく、政治的な意図で政府がABC協会の資料の活用を中断することの方が問題だ。政府のメディアに対するランク付けがさらに露骨になるのではないか」と懸念した。

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