文化総合
国文科をWeb文芸学科に…危機の韓国地方大学「オタクを待ってます」
「全国のオタクを待っています」
日本のアニメーションマニアに向けたミーティングの呼び掛けではない。43年の伝統を誇る東国大学校慶州キャンパスのWeb文芸学科の教授陣が、未来の新入生に向かって呼び掛けたあいさつ文だ。
■桜の開花順に破綻する?
韓国大学教育協議会によると、2021年の定時募集で追加募集をかけても定員に達しなかった四年制大学は198校のうち162校。このうち90%以上は地方の大学だった。少子化による学齢人口減少に加え、受験生の首都圏大学への集中現象が続き、首都圏から遠い大学ほど危機が高まるという意味の「桜の開花順に破綻する」という言葉が無視できない現実となった。
このような状況で、東国大慶州キャンパス国語国文学専攻の教授陣は、果敢な選択に出た。「21世紀のWeb基盤の文化芸術をリードする独創的な人材を養成する」という目標の下、「国文科」という看板を捨て、「Web文芸学科」として全面的に生まれ変わったのだ。
■専攻科目は「ネットフリックス探究生活」
もちろん、変わったのは学科の名前だけではない。Web文芸学科の専攻教科目には、既存の大学の教育課程には見られなかった斬新な名前が多数、登場する。
1年生の基礎専攻の一つである「ネットフリックス探究生活」では、OTT(オーバー・ザ・トップ。従来のインフラに頼らない、インターネットによるコンテンツ配信)サービスを主に利用する文化受容者たちの特性と要求を分析し、インターネット動画配信サービス「ネットフリックス」で提供される人気コンテンツを実際に鑑賞しながら、映像文芸創作に向けた準備を進める。
上級学年になると、実践に近い専攻授業が増える。例えば「アニメーションとオタク」講座では、韓国、米国、日本のアニメーションの主な特性を分析し、アニメーション・ストーリーテリングのための技法を訓練する。オタク、すなわちマニアを生むために、そのアニメはどんな会話体を使っているのか、どのように事件を展開しているのかなどを学ぶ。
ほかにも「ゲーム批評」、「ロマンスウェブ小説創作」、「K-POP作詞演習」などの教科を準備中だ。
■昼間は李光洙を学び、夜はウェブ漫画を楽しむ若者たち
東国大慶州キャンパスWeb文芸学科長のオ・テヨン教授は「いわゆるMZ世代(1980-2000年代初め生まれのミレニアル世代と1990年代半ば-2000年代生まれのZ世代を合わせた造語)と呼ばれる若い学生たちに、勉強と遊びの境界を設定する必要のない場を設けてやりたかった」と話した。国語国文学を専攻する学生たちはほとんどが、昼間は100年前に書かれた李光洙(イ・グァンス)や崔南善(チェ・ナムソン)の文学を学び、夜にはアップロードされたばかりのウェブ小説やウェブ漫画(ウェブトゥーン)を楽しむ。オ教授は「針の穴を通るほど厳しい作家デビューを目指すのではなく、卒業後はウェブ小説、ウェブ漫画、ウェブドラマ、ゲームナレーションなどさまざまな分野に進出し、自分の夢を広げていく。そのような学科を作ろうと思った」と説明した。
これを実現させるために、教授陣にも関連分野の専門創作者たちが大勢加わった。映画『完璧な他人』、『エクストリーム・ジョブ』の脚本を執筆したペ・セヨン氏、ウェブ小説『元ガチ勢、初心者に生まれ変わる』、『財閥強占期』などで知られる小説家のStep on a LEGO氏、昨年の新型コロナウイルス感染拡大を受けて始まったオンライン講義で、華麗な語り口で瞬時に1万人の非対面受講生を獲得した劇作家のパク・ノヒョン教授などだ。ほかにもウェブドラマ『恋愛プレイリスト』の脚本家イスル氏をはじめ、ウェブ文芸の創作者による特別講義も実施する計画だ。
■「以下のうち一つでも当てはまったら志願してください」
Web文芸学科がまだピンとこない人のために、教授陣がチェックリストを作成した。
このうち一つでも当てはまるものがあれば、志願資格は十分満たしているというのがオ教授の説明だ。
・一度見た映画を忘れることができず、何回も見たことがある人
・休日に睡眠時間を削ってドラマの一気見に挑戦したことがある人
・ゲームのストーリーやキャラクターに入り込み、胸がジーンとしたことがある人
・ウェブ小説をあと1話だけ読んで寝ようと思っていたのに、気づいたら徹夜していたことがある人
・大好きなウェブ漫画の最新話のアップロードが遅れてイライラしたことがある人
・ユーチューブを見ていて、自分もやってみようと思ったことがある人