ピープル
「日帝時代の人権じゅうりんの責任を問うべきなのと同様に北の人権侵害も傍観してはならない」
「北朝鮮の人権を扱う多くの方が『北朝鮮』『脱北者』といったキーワードで始まりますが、私の出発点は『人権』でした」
6月1日、ソウル市鍾路区の「転換期正義ワーキンググループ」(TJWG)オフィスで会った法律分析員のシン・ヒソク博士(39)は、このように語った。TJWGは設立から7年になる人権運動団体で、独裁・内戦・戦争・植民統治を経験した国の「体制転換」過程で発生する人権問題を扱っている。北朝鮮内部の人権侵害や日帝強占期の人権じゅうりんは、いずれもこの団体が扱う事案だ。
シン博士は、北朝鮮の人権侵害について地道に問題提起を行ってきた。最近では、対北ビラ禁止法の不当性を伝える先頭に立った。今年2月、保守系最大野党「国民の力」国際委員会の後援により韓国国会で開かれた「対北ビラ禁止法、何が問題なのか」と題する討論会で、シン博士は「北朝鮮住民の知る権利を侵害する、明らかに違憲の法律」だと声を強めた。昨年発生した公務員殺害事件のときは、遺族を支援して国連に陳情書を提出する上で主導的な役割を果たした。「韓国の現政権は人権問題において過度に『北朝鮮例外主義』を適用しており、問題です。人権は国際社会の全ての構成員に等しく適用されるべき普遍的基準なのだから、南北関係の特殊性を考慮して例外を置いてはなりません」。シン博士は「今の政権は北朝鮮の人権侵害について単に沈黙したり不作為であったりするにとどまらず、積極的に加担・同調している」とし「韓国政府が北朝鮮の国際法上の犯罪行為について共犯になってはならない」と強調した。
シン博士は、北朝鮮問題だけでなく日本軍慰安婦問題に関しても活発に活動いている。今年2月には、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんと共に「日本軍慰安婦問題の国際司法裁判所(ICJ)回付推進委員会」を結成した。慰安婦問題に関して日本政府に国際法上の責任を問うためだ。ちょうどこのころ、「慰安婦売春論」を発表して国際社会の非難を浴びたマーク・ラムザイヤー・ハーバード大学ロースクール教授は、シン博士がハーバード大学ロースクールの修士課程(LLM)で学んだ2012年当時、学内の有名教授だった。「法経済学者だったラムザイヤー教授が、検証されていない歴史的ファクトを根拠に掲げたのはミスです。けれども今回の『ラムザイヤー騒動』で、逆に日本軍慰安婦問題がハーバードのような米国の主流社会に広く知られるきっかけになりました」
シン博士が初めて人権問題に関心を持ったのは、オランダのアムステルダムに1学期間の交換学生として出掛けた2004年のこと。オランダは国際刑事裁判所(ICC)、国際司法裁判所、常設仲裁裁判所(PCA)が置かれている「国際法の中心地」だ。シン博士はここで、国際社会に平和を定着させるための共通規約として「人権」の価値に注目したという。「韓国に戻ってきても国際法や人権というキーワードをどのように活用できるか悩みました。韓国も今では経済規模トップ10圏の大国であるだけに、国際社会で主導的に声を上げる必要があります」。そんなシン博士の父親は、1998年に韓国代表としてICC設立を主導した外交官、シン・ガクス元駐日大使だ。
アン・ヨン記者