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「中国のスパイ養成所・復旦大学反対」欧州の広場で1万人が反中デモ
5日(現地時間)昼、ハンガリーの首都ブダペストの国会議事堂前。「NO復旦大」「植民地を作るな」などの反中プラカードを持ったブダペスト市民たちが集結した。彼らは親中系のオルバーン・ビクトル首相が中国政府と手を握り、上海の復旦大学キャンパスをブダペストに作ることにした計画に抗議しようと街頭に出た。ドイツ公営放送のドイチェ・ベレは同日、「デモ参加者は1万人に達する」と報道した。6月4日に天安門事件から32年を迎えた翌日、欧州で大々的な反中デモが行われたものだ。
この日のデモ隊は、加速化する中国の進出に強い反感を示した。言論を弾圧し、表現の自由を委縮させ、鉄拳統治を日常的に行うオルバーン首相は西側と対立する一方で中国と密着している。このため、かつて共産主義体制を経験したハンガリーの人々は中国の反民主主義や人権弾圧行動に拒否感を示し、オルバーン首相を非難している。
この日のデモには、野党所属のカラーチョニ・ゲルゲイ・ブダペスト市長も参加した。カラーチョニ市長は天安門事件の時、戦車に対抗する青年の写真を持って市内を行進した。同市長は復旦大学キャンパス建設に反対するとして今月3日、市内4つの通りの名前を「自由な香港通り」「ウイグル殉教者通り」「ダライ・ラマ通り」などに変えた。中国の人権侵害を強調したものだ。ハンガリー政府は「ハンガリーの学生たちが高等教育を受ける機会が増えるだろう」と主張しているが、ハンガリーの反政府系メディアは「中国スパイ養成所になるだろう」と懸念している。
復旦大学ブダペスト・キャンパスは同大学が欧州に初めて作るキャンパスで、2024年までに完成する予定だ。中国が影響力を拡大させようと欧州に据える「トロイの木馬」との指摘もある。キャンパスの建設費用15億ユーロ(約2000億円)のうち、13億ユーロ(約1730億円)を中国政府が融資し、ハンガリー政府が返済することになっている。建設費用はハンガリー政府が1年間に高等教育に投入する全予算よりも多く、議論を呼んでいる。中国の建設会社が中国製資材でキャンパスを作っている。しかも、復旦大学キャンパス設立用地はもともと貧しい地方出身の学生たちにとって手ごろな価格の住宅を建てることになっていた場所だったため、ハンガリー国民を刺激している。
この日のブダペストでのデモは、ますます広がりつつある欧州内の反中感情を示す象徴的な出来事だった。ハンガリーだけでなく、ドイツ・フランスなど大半の欧州諸国でも「中国嫌悪症」は拡大している。中国が欧州企業を相次いで買収するため拒否感を持つ人が多い。新型コロナウイルスも中国が拡散したのではないかという疑いを抱いている人がまだ多い。香港の欧州連合(EU)事務所は4日、天安門事件から32年を迎えて、窓際にろうそくを立ててともした写真をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ツイッター」に掲載、「EUは普遍的な人権を擁護する」と投稿した。
欧州主要国は中国の勢力拡大を防ぐ対策を用意している。EU執行委員会は先月4日、6年間の交渉の末、昨年12月に妥結した中国との包括的投資協定(CAI)批准を中止すると宣言した。そして、この発表から4日後には8年間中断されていたインドとの自由貿易協定(FTA)を再開すると発表した。EUはこれより前の今年3月、中国によるウイグル族弾圧を理由に、米国・カナダと連携して中国人高官4人を制裁対象に指定した。リトアニアは先月、中国の習近平国家主席が毎年1回、東欧の首脳たちを集める、いわゆる「17+1首脳会議」から脱退すると宣言した。
EUを離脱した英国も中国と鋭く対立している。中国の統制装置である香港国家安全維持法を避け、英国に移住する香港人を幅広く受け入れている。英国で来週開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)にインド・オーストラリア・韓国の首脳をゲストとして招待したのも、中国を念頭に置いた動きだと見方が多い。
中国にとって初の西側諸国における修交国で、欧州で共産主義政権に最も友好的なスウェーデンも最近は中国を遠ざけている。2005年に欧州で初めて中国文化を伝える機関「孔子学院」を開設したスウェーデンだが、昨年、欧州で初めて孔子学院をすべてなくした国になった。孔子学院は中国共産党の宣伝道具だと批判されている。
欧州の反中ムードはしばらく続く可能性が高い。中国との包括的投資協定を主導し、中国と近かったドイツのメルケル首相は9月に退任する。イタリアでも親中傾向が顕著だった左派連立が崩れ、2月に強力なEU統合主義者のマリオ・ドラギ首相が就任し、挙国内閣を組んだ。しかし、欧州における反中の動きも限界があるという見方も出ている。巨大な中国市場を遠ざけることは、欧州にとっても損失になる可能性があるからだ。