94年生まれの著者が語るリアル韓国20代の人生と思考

【新刊】イム・ミョンムク著『K-を考える』(サイドウェイ刊)

 韓国で4月7日に行われた再選挙・補欠選挙で20代有権者が野党候補に圧倒的支持を見せたことから、「1990年代生まれ」は再び話題になった。それに伴い、「個人主義」「公正」「保守化」などで20代を説明しようとする試みも登場した。しかし1990年代生まれが直接マイクを握り、これを分析する姿を見いだすのは難しい。こうした中、1994年に生まれた20代の論客イム・ミョンムク氏(27)が、90年代生まれを90年代の目でのぞき見た本を出版した。2018年から日刊紙に20・30代向けコラムを連載している彼は、フェイスブックのフォロワー数が1万2000人に達する。5月13日にソウル市麻浦区弘大で会ったイム氏は「個人主義的だ、公正を好むというような分析が皮相的に感じられた」とし90年代生まれの実体を討論してみるきっかけになればと思う」と語った。

-既に『90年代生まれが来る』のような本が出ている

 「目次からして隔たりを感じた。90年代生まれは、実際に接してみるとすごく多様なのに、著者が一緒の仕事をしてみたジュニア、マーケティング対象にしてきた90年代生まれに偏っていた。『90年代生まれはなぜそうなのか』についての説明がない皮相的な内容だった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこれを青瓦台(韓国大統領府)のブレーン陣に回読させたという報道を見て頭を抱えた」

 『90年代生まれが来る』の著者は1982年生まれだ。

-20代を「公正」で説明しようとする試みが多い

 「仁川国際空港公社の非正規職転換問題、チョ・グク元法相の問題が起きた当時は怒った。だが、既成世代と比較して、ことのほか公正を追求する世代でもない。586世代(60年代に生まれて80年代に大学へ通った50代)が法律を逆用したり脱法行為をしたりして、それによって恩恵を受けた90年代生まれの子どもが、『公正』を理由に自身のチャンスを拒否することはない。90年代生まれが『能力主義』を信じていて、国家システムがこれに基づき、予測できるように動くべきだと期待しているのは事実だ」

-平昌オリンピックの単一チーム問題も「公正」が課題だった

 「公正と能力主義もあるが、北朝鮮に対する認識の変化が現れたケースだ。『わが民族』は大韓民国に局限して考えている世代。大韓民国で競争し、代表チームが決まったのに、なぜ北朝鮮の選手を入れてやるのかという雰囲気だった。統一についても、大部分は『北朝鮮と組まされてもっと大変な思いをしたくない』と考えている」

-個人主義的という指摘も多い

 「個人主義的であればやらないはずの行動を取っている。ソーシャルメディアで認められようと競争に没頭し、オンラインでの集団行動を通して有名人の逸脱行為を『袋だたき』にする。個人主義であれば、そんな行動は取らないだろう。民族主義的な部分も現れた。最近のSBSドラマ『朝鮮退魔師』を巡る論争や『旭日昇天旗』論争などは、反中・反日感情から出た。民族主義は退潮したとしつつ退潮していないことを示す現象だ」

-90年代生まれはどういう存在なのか

 「6・25戦争の後、同質化された社会で時間がたつにつれ階層分化が進んだ。90年代生まれは、現代韓国において、親世代の階層が受け継がれる最初の世代。学生運動をしていた『586世代』の子どもと違って、当時大学に進学できなかった『56世代』(60年代生まれの50代)の子どもに付与されるチャンスはずっと小さいものになった。低成長の局面が続き、競争は激化する中で、よりよい未来が来るだろうという期待も低い。ソーシャルメディアも剥奪感を育んだ。1970年代の研究を見ると、ソ連でテレビが普及すると農村の人々はモスクワの風景を見て剥奪感を抱いたとある。90年代生まれも、同じ理由で『主体的不幸感』を抱えている」

-586世代責任論のようにみえる

 「586は主流になっていながら、依然として『主流は別にある』と考えている。革命を語りながら上流中産層として恩恵は享受しようとしている。教育と人脈で階層世襲を追求している」

 彼は著書に「チョ・グク問題は、586が資産増殖と階層世襲に没頭する人間たちだったというステレオタイプを、ドラマ以上に劇的に見せてくれた事件」とつづった。

-男嫌い・女嫌いが最も深刻な世代だという指摘がある

 「小学生のころからインターネットコミュニティーの論調に影響を受けた世代だ。9歳のとき、学校で『男子の軍隊vs女子の妊娠』で男女が論争した。2000年代の軍加算点(兵役を果たした人が公務員試験で加算点を得る制度)廃止論争が、コミュニティーを通して小学生にまで影響を及ぼしていた。その後は、男の方が優れていると主張する『男超』、女の方が優れていると主張する『女超』コミュニティーの極端な意見が広まり、性関連の問題は中間地帯が消えて口を開くのも難しい雰囲気になった」

-既成世代が90年代生まれを理解するには

 「90年代生まれが消費するコンテンツを見ればいいと思う。『人生は漢江の水ではなく漢江の眺め』という言葉がある。ソウル大学の学生にしても高卒の友だちにしても、一発逆転主義が基調にあるウェブ小説、ウェブ漫画コンテンツを消費している。コンテンツで『身分上昇』についての代理満足を感じているのだ。『前世』『タイムスリップ』などを通して未来の情報を知り、何倍ものカネを稼ぐ物語構造だ」

 著者は忠清南道鳥致院で生まれ、2013年にソウル大学の人文大学アジア言語文明学部に農漁村特別選考で入学した。両親は粉食屋(うどんやラーメン、トッポッキなど簡単な料理を出す軽食店)を営んでいる。ソウル大学という韓国を代表する学部と、多文化になじんだ邑(ゆう)単位の行政区域という、二つの世界を往復しつつ暮らしてきた人物だ。368ページ、1万7000ウォン(約1650円)

ヤン・ジホ記者

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