オーストラリアに1年間滞在したときのことだ。現地で通っていた韓国人教会主催の「韓国人養子縁組の日」と呼ばれるイベントに参加したことがある。そこに同席した青い目のオーストラリア人が韓国から養子として迎えた子供を抱きながら「私の息子」「私の娘」として紹介した。韓服を着てこのイベントに参加したある夫婦は「2人に子供をプレゼントしてくれた韓国に感謝している」と述べた。「これこそ先進国だ」と感じた。黒人の子供8人を養子として迎えた米国の白人夫婦の話を海外メディアのニュースで読んだことがある。人種が異なる子供たちと家族になった理由についてこの夫婦は「愛情を分かち合うのが家族だ。肌の色は重要ではない」と語った。

 新生児は生まれておよそ100日後に両親を知り、愛着を持つようになるという。何かを口にすることや、目を合わせて笑いながら恥ずかしがることも全てが愛着の表現だ。しかしこの関係は血縁がないと形成されないというものではない。子供が実の親と離れた場合は分離不安症を患う。育児の専門家によると、分離不安症期間の2倍以上の時間をかけて愛情を注がなければ、その傷を癒やし養父母と安定した愛着関係を築くことができないという。養子縁組が遅れた場合は、より念入りに愛情を注がねばならないということだ。

 昨年の養子縁組の件数は492件(うち海外養子縁組は232件)で、最初に統計が取られた1958年以来最も少なかったという。養子をめぐる悲惨な事件も相次いで報じられ、何とか養子を決意した人をためらわせることもある。昨年10月にはチョンインちゃんが養父母から虐待を受け死亡するという衝撃的な事件も起こった。そのショックは今も忘れられないが、わずか2歳の子供を「ぐずった」という理由で殴り重体にした養父は逮捕された。

 養父母たちは養子縁組みについて「親のいない子供に一方的に与える恩恵」とは考えていない。作家キム・イソルの短編小説「今日のように静かに」は養子縁組が親と子の双方にとって祝福となる話だ。小説では生理から来るうつ病で死の誘惑に苦しむ女性が、母親を失ったショックで失語症になった少女を娘として迎える。母親となったこの女性は自殺の衝動から抜け出し、人生に対する意欲を取り戻した。また母親を持った子供も失語症を克服するというストーリーだ。

 本紙5月13日付に心で生んだ娘を育てるソウル市江東区に住むチョ・ホジェさん夫妻を紹介する記事が掲載された。男の子と女の子の2人の子を持つチョさん夫妻は3年前に末っ子のソンウンを養子として迎えた。チョさんは「子供のおかげで幸せだ」「ソンウンは天が与えてくれたプレゼント」と語る。夫婦だけのプレゼントだろうか。養子への虐待事件で傷ついた国民にとってもチョさん夫妻の話はプレゼントであり慰めになる。ソンウンと家族が今後も愛情を分かち合い幸せになることを願っている。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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