中国のインターネットメディア「騰訊網」は3月28日、半導体ファウンドリーの武漢弘芯半導体(HSMC)が投資誘致に使っていた最先端半導体製造設備は実態がない虚偽だったと報じた。HSMCは過去に「オランダの半導体製造設備メーカーASMLから中国唯一の極端紫外線(EUV)露光装置を輸入した」と説明していた。しかし、それは実はEUV露光装置ではなく、清華紫光集団(清華ユニグループ)など他の中国メーカーも保有しているありふれた設備だった。騰訊網は「銀行に差し押さえられた設備を買い取るという企業もない」と伝えた。  

 実際にはオランダのASMLは米国の対中規制で中国本土にはEUV装置を1台も輸出していない。簡単に確認できるうそにだまされ、中国政府はHSMCに1280億元(約2兆1600億円)を支援したが、結局これといった製品を作ることができないまま、3月2日に廃業した。

■昨年は半導体メーカー6社廃業

 中国政府が主導する「テクノロジー崛起(くっき)」に至るところでひびが入っている。半導体、スマートシティー、スマートカーなどイノベーション分野で巨額の政府資金をつぎ込んだ事業が相次いで中断され、廃業する企業が相次いでいる。数兆-数十兆ウォン規模の大型プロジェクトの失敗が相次ぎ、中国政府は「新興産業への各地方政府の投資が過熱している」と直接警告に乗り出した。

 最近中国の半導体業界では「ランウェイチャオ(爛尾潮=相次ぐ破綻廃業)」という言葉が流行している。新浪網によると、昨年1年間だけで100億元規模の大型半導体プロジェクト6件が中断された。昨年1月には江蘇省の淮安半導体(HIDM)、4月には陝西省の陝西坤同半導体、7月には南京市の徳科碼(南京)半導体科技が事実上の廃業段階に入った。これら企業はいずれも設立から4-5年の新興企業で、中には地方政府系の投資会社が過半数株式を握る「準国有企業」も多い。現地業界は「技術産業の基本も知らない官僚のやみくもな投資と専門性を欠く経営が露見した」と評している。地方の官僚が中央政府に良い格好をするため、「イノベーション事業」と聞けば、事業計画書をまともに検証することもなく、投資を実行してしまう慣行が問題の原因だ。

■EV、プラットフォーム事業も廃業相次ぐ

 半導体だけではない。国営新華社通信は3月17日、今年の全国人民代表大会(全人代)と全国人民政治協商会議(全国政協)でこれまで7年連続で言及された「新エネルギー車(NEV)」が政府活動報告から抜け落ちたと報じた。政府活動報告は中国政府が年間で集中する事業を定めるロードマップだ。自動車メーカーが電気自動車(EV)や燃料電池車を開発するとして、政府の補助金を受け取った後、廃業する事態が相次ぎ、政府はNEVを政府活動報告から除外してしまったのだ。外国車のデザインを模倣することで知られた衆泰汽車は、NEV開発を名目として、政府から補助金を受け取ったが、60億元以上の営業損失を出し、廃業手続きに入った。河北紅星汽車製造、力帆汽車も同様に廃業した。

 最近中国の地方政府が雨後のタケノコのように設置している「ライブコマース基地」も9割は赤字だ。ライブコマース基地は政府が準備した建物に商品販売の実演者を入居させ、さまざまな撮影設備やネットワークを提供し、商品を販売させる政府主導のプラットフォーム事業だ。広州市だけでそうした基地が50カ所もできたが、販売実績は低調だという。

 3月23日には江蘇省淮安市で計画されていたスマートシティーの官民共同開発プロジェクトが頓挫したと報じられた。中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)などが参加し、数年間で数十億元の予算を投じたが、成果を上げることなく、事業が中断されたという。新浪網は「淮安市のスマートシティーは6年たってもゴースト都市だ」と伝えた。淮安市は現在、政府とは別にスマートシティー事業を引き継ぐ民間企業を模索しているという。

 こうした状況が続き、3月11日の全人代後の記者会見で李克強首相に対し、「半導体など国家が主導するイノベーション事業が頓挫するケースがあまりに多い。どうするつもりか」という質問まで飛んだ。IT業界関係者は「最近株式投資家が中国のテクノロジー企業への投資割合を高めているが、実体を伴わなかったり、誇張されていたりするケースが多いため、慎重にアプローチすべきだ」と指摘した。

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