3月16日午後に開かれたコロナ中央防疫対策本部の定例ブリーフィングには、ことのほか取材陣の関心が集まった。血栓が生じる副作用を理由に、欧州連合(EU)4大加盟国のドイツ、フランス、イタリア、スペインがアストラゼネカ社のワクチン接種を停止すると発表した翌日だったからだ。間もなく4月から、65歳以上の高齢者層など韓国の一般国民を対象にアストラゼネカ社のワクチン接種が本格化するが、果たして計画通りに進めても差し支えないのかどうか、気に掛かるのは避けられないタイミングだった。

 ところがブリーフィングを担当した疾病管理庁の幹部は、最近韓国国内で起きた「公衆浴場集団感染」の指摘ばかりを続け「風邪や体調不良の症状がある場合は公衆浴場に行かないでほしい」という言葉を繰り返すだけだった。

 終わりかけになってアストラゼネカ社のワクチンの安全性に関する質問が出ると、疾病管理庁はいわゆる「サツマイモ答弁(もどかしい答弁)」を貫いた。「欧州の国でアストラゼネカ社のワクチン接種を中断したが、韓国の対応は何か」と尋ねたら「欧州医薬品庁(EMA)が18日に(ワクチンと血栓の因果関係について)会議を開催する計画なので、その結果を鋭意注視したい」と答弁した。もし「アストラゼネカ社のワクチンの安全性を巡る論争が拡大したら、接種計画を修正するのか」という質問には「(EMAの会議の結果に基づいて)その水準に合わせて予防的に、予防接種を施行することも考慮してみることができると思う」とあいまいな答弁を行った。「それはどういう意味か」と再度尋ねると「接種の中断も一つの選択肢として検討対象になる」という「爆弾発言」を放った。韓国国内のワクチン接種計画が全面再検討されかねない-という反応が湧き上がると、疾病管理庁は後から「当初の計画通りに接種を行いたい」と火消しに乗り出した。

 防疫の過程で最も重要なのは、情報を正確かつ透明に伝える作業だ。国民の混乱を減らし、感染拡大を遮断する「最初のボタン」だ。こうした点で、韓国の防疫当局は依然として未熟な面をあらわにしている。初期のころの入国遮断から最近のワクチン供給の件に至るまで山場になるたび、何かすっきりと国民の胸のつかえを取ることができずにいる。ワクチン供給の遅れに対する批判を受けたとき、韓国当局は「接種を先に始めた国々で発生する問題を1-2カ月、先に観察することができて幸い」と言っていたが、今になってみると「他山の石」とすら呼べないという感を拭い切れない。

 疾病管理庁が、韓国国内で発生したアストラゼネカ社ワクチンの死亡者から「血栓の所見」が出た事実を隠そうとしていた状況も露見した。3月6日に死亡した60代女性の解剖の過程で血栓が出てきたのに、こうした事実を知りながら5日以上も「血栓関連の事例はない」と隠してきた。国民の懸念や心配を大きくしようというのではない。透明に情報を伝え、血栓の懸念は杞憂(きゆう)であってアストラゼネカ社のワクチンを打ってもいいと、国民向けの説得を積極的にするべきという意味だ。4月から一般人の接種が始まり、誰かの夫や妻、父、母がアストラゼネカのワクチンを打たれる。それなのに防疫当局が自信を持って物を言えずに隠していたら、誰が安心してワクチン接種を受けるだろうか。

金成謨(キム・ソンモ)記者

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