▲中国産キムチ恐怖症-インターネット上で拡散している中国のキムチ工場の動画のスクリーンショット。白菜は汚い水で漬けられており、さびた重機と裸の労働者が白菜をかき回している=左の写真=。右の写真は、地面を掘った所で大根を漬けている様子。写真=NEWSIS

 3月13日、首都圏のゴルフ場内にあるレストラン。メニューにある料理の原産地を確認したチャン・スンヨルさん(34)が「ここも中国産キムチを使っている」と言って、キムチの皿をそっと押しやると、朝食を食べていた一行もまったく手をつけなかった。チャンさんは「最近、非衛生的な方法でキムチを漬けている中国のキムチ工場の動画を見たので、それからは飲食店に行くとまずキムチの原産地を確認するようになった。中国産キムチならばまったくはしを付けない」と言った。

 中国に端を発するキムチ騒動の波紋が韓国のキムチ消費市場を揺るがしている。不衛生な環境の中国キムチ工場動画が公開されたのを受け、中国産キムチを使う飲食店を避ける現象が出ているのだ。動画には薄黒く濁った水で漬けられた白菜がさびた重機で運ばれる様子が写っている。裸の作業員が塩蔵施設に入り、素手で白菜をもむ姿もあった。一方、韓国産キムチを製造する大手企業が「パオツァイ(泡菜)」という中国式の名称で中国向け輸出製品を販売していることが分かり、大騒動となっている。

■中国産キムチを嫌がる人が急増

 国内の一般飲食店では中国産キムチを使う場合が多い。国産キムチと中国産キムチの価格差は小さくても5倍、大きければ7倍以上もあるからだ。輸入量も着実に増え、昨年のキムチ輸入額は1億5242万ドル(約166億円)と過去最高を記録した。輸入されたキムチの99%が中国産で、一般的な飲食店10店のうち8店で中国産キムチを使っていると業界では推定している。新型コロナウイルス感染症の影響で売上高の打撃が大きい中、中国のキムチ工場の動画が「中国産キムチ恐怖症」まであおり、キムチが主材料であるキムチチゲ(キムチ鍋)などを売る飲食店は苦境を訴えている。

 京畿道水原市内でキムチチゲ専門店をしていたある店主は「1日20件ほどだった配達の注文が5件に減り、売上高も半分以上減った」と話す。小規模店経営者・自営業者68万人が参加しているインターネット・コミュニティー・サイトにも「中国産キムチを使っているという理由で客が減った」という書き込みが相次いでいる。中国産キムチ恐怖症が広がっているのを受け、食品医薬品安全処は「該当の動画に出てくる白菜は輸出用ではない、と中国にある韓国大使館に確認した」と明らかにしたが、騒動は簡単には収まりそうにない。

 「中国産キムチが韓国市場を掌握しているのは、大規模な納品が可能な業務用キムチ市場に大企業が参入できないようにしているからだ」という指摘もある。2011年にキムチが中小企業適合業種に指定されたのに続き、2018年末には生計型適合業種に指定され、大手・中堅企業の業務用キムチ市場進出が不可能になった。業界関係者は「零細な中小キムチ製造業者は現実的に見て中国産の白菜を使うしかなく、価格競争力も中国産に押されている。大量生産システムを備えることができる大手企業や中堅企業の市場参入を阻んでいる間に、中国産が業務用キムチ市場を掌握した」と語った。また、一部には「外国のように小皿料理も1皿あたりの料理代を別途に取ったり、キムチチゲのような韓国料理の価格を現実的にしたりする方式ならば、飲食店でも国産キムチを使用することができる」という代案を提示する声もある。韓国の飲食店では普通、メインの料理を1品注文すると、無料の小皿料理が複数付いてくるが、これをそれぞれ有料にしようということだ。

■韓国企業はお手上げ

 CJ第一製糖(bibigo)、大象(宗家・清浄園)、プルムウォンなど国産ブランドのキムチを販売している大手企業も苦慮している。大手食品メーカー各社が中国で販売しているキムチと、キムチが入っているギョーザやチゲなどに、キムチの代わりに中国式漬け物を意味する「パオツァイ」と表記して販売していたことが明らかになり、一部では「不買運動をする」「国の品格とプライドを捨てた」と非難の声が巻き起こっているからだ。該当の各企業は「中国の食品安全国家基準上、キムチなどの製品は、パオツァイと表記しなければ販売できないため、泣く泣く従うしかない」と説明している。中国がキムチの所有権を主張している状況で、韓国産キムチを中国式の名称で表記していたことが、消費者の民族感情を逆なでしているのだ。ある食品メーカー関係者は「韓国の法律上も、中国現地の工場で製造したキムチは『韓国キムチ』と表記できない。すべてをメーカーのせいにされては悔しい」と語った。

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