韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が新年会見で、裁判所の強制徴用判決と関連して「(日本企業の資産が)強制執行の形で現金化されることは望ましいと思わない」と発言した。韓国の裁判所は昨年末から、徴用被害者らの請求に基づいて差し押さえた日本企業の資産を現金化(売却)する手続きを進めている。これに大統領が、公に反対の立場を表明したのだ。

 朴槿恵(パク・クンへ)政権時代に韓国外交部(省に相当)が徴用判決関連の意見書を大法院(最高裁に相当)に送ったことを巡り、与党側は「裁判の取引」だと攻撃した。韓日関係が破局に直面しかねない可能性を大法院に知らせることのできる問題でも、「司法介入」だと追い込んでいった。梁承泰(ヤン・スンテ)前大法院長は身柄まで拘束された。文大統領は、2019年の新年会見では「司法府の判決に政府は関与できず、尊重すべき」と言っていた。ところがわずか2年で態度が急変した。与党の民主党の議員らも、日本へ行って「強制徴用問題は現在の状態で封じるのがいい。大法院も破局を望まないだろう」と言った。前政権の意見提出は犯罪だというのに、自分たちはおおっぴらに裁判所を圧迫する。

 文大統領はまた「(現金化の)段階になる前に両国間の外交的解決法を探ることが優先」と語った。その外交的解決が、朴槿恵政権時代の韓日合意だった。文政権はこの国家間合意を破棄し、反日で追い込み始めた。「竹やり歌」を歌いながら、存在もしていない親日派攻撃も行った。それでいて、今になって裁判所の判決を無視して「外交的解決法を探そう」と言っている。2015年の韓日慰安婦合意を破棄した張本人である文大統領が「(あの合意が)両国政府間の公式合意だったという事実を認める」と言った。過去4年間、韓国政府が繰り広げてきたことは全く何だったのか。結局、何の方策もなしに国内政治用として利用したにすぎなかった。

 韓国の現政権はこれまで、韓日問題について外交的解決法を語ると「親日派」「土着倭寇(わこう)」と追い立てた。突然態度を変えた理由は、東京オリンピックのときに金正恩(キム・ジョンウン)を呼んで南北ショーをまたやろうと思ったら、日本との関係を改善しなければならないからだ。「韓米日協力」を重視するバイデン政権の発足も影響を及ぼしたことだろう。底意の見える振る舞いを、日本は全て見ている。恥ずかしい限りだ。

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