韓国軍
北に戦術核搭載ミサイルと放射砲を同時に撃たれたら韓国軍は為す術なし
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は労働党第8次大会での報告において、異例にも「戦術核兵器の開発」について複数回にわたり公に言及した。これまで「対米用」と宣伝してきた核兵器について「韓国にも使用できる」とする本音を口にしたものと分析されている
戦術核兵器は数キロトン(TNT爆薬1000トンの威力)から数十キロトンの威力を持つ。韓国を主に標的とするもので、射程距離が400-600キロ前後の新型戦術ミサイルや超大型放射砲(直系600ミリ)などに搭載できる。北朝鮮が核弾頭や在来型の弾頭を装着したこれらの兵器で同時に攻撃してきた場合、核弾頭と非核弾頭の区別はもちろん、それらの迎撃は事実上不可能となり、韓国にとっては致命的な脅威になりかねない。
朝鮮中央通信によると、金正恩氏は「核兵器を小型軽量化し、戦術武器化をより発展させ、現代戦において作戦任務の目的と打撃対象によって異なった手段として適用できる戦術核兵器を開発し…」と述べた。北朝鮮がこれまで戦術核兵器の開発成功を暗示したことはないが、これについて金正恩氏が肉声で明言したのはこれがはじめてだ。
金正恩氏はさらに「歴史的な2017年11月の大事変(火星15号発射)後も、核武力の高度化に向けた闘争を止めることなく領導し、巨大かつ新たな勝利を手にした」とも主張した。金正恩氏は自らシンガポールとベトナムのハノイで米国と非核化に向けた会談に応じたが、その際にも核開発を続けてきたことを認めた形だ。
北朝鮮は「先端戦術核兵器」として超大型放射砲、新型戦術ミサイル、中長距離巡航ミサイルなどにも言及した。その中でも中長距離巡航ミサイルの開発については今回はじめて公にした。また北朝鮮がこの兵器に核弾頭を装着する能力を確保したかどうかは最も注目すべき部分だ。まず「北朝鮮版イスカンデル」として広く知られる新型の戦術ミサイルは射程距離が600キロ以上で、韓国の全域と日本の在韓米軍基地を射程圏に置いている。2019年以降、試験発射を複数回にわたり行い、昨年10月の軍事パレードに登場させたことで実戦配備段階にあるとも伝えられている。このミサイルの弾頭重量は500-600キロ、直径は92センチほどだという。北朝鮮が2017年の6回目の核実験に先立ち公開した核弾頭は直径60-70センチ、重量は500キロ前後とみられることから、北朝鮮の新型戦術ミサイルには核弾頭が装着できると推定されている。
しかし「北朝鮮エイタクムス」と呼ばれる新型ミサイルと600ミリ超大型放射砲の場合、弾頭の直径や重量などから推測すると、「これに装着する戦術核弾頭については、北朝鮮は現時点で開発できていない可能性が高い」と韓国軍当局はみている。ある韓国軍筋は「北朝鮮はまだ核弾頭を重さ300キロ、直径60センチ以下では開発できていないようだ」と伝えた。
韓国軍当局は北朝鮮のミサイルの脅威に対抗し、ミサイルの移動式発射台を早期に探知し、30分以内にこれを無力化する「キル・チェーン(戦略標的打撃)」、さらにミサイルを迎撃する韓国型KAMD(ミサイル防衛システム)を発展させている。しかし北朝鮮が新型戦術ミサイルや超大型移動式放射砲の発射台を数十基以上製造・配備した場合、これらを短時間で探知し破壊するのは現実的に不可能とみられている。また同時に数十発が飛来した場合、従来のパトリオットPAC3ミサイルやTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)による迎撃も難しい。とりわけ北朝鮮の新型戦術ミサイルは迎撃を回避できる変則起動が可能だ。
上記の韓国軍筋は「北朝鮮が戦術核を実戦配備すれば、韓国軍の通常兵器における質的優位も事実上消滅する」として警戒を示した。