コラム
【コラム】「メード・イン・チャイナ」という自負心
最近中国の10-20代の消費者が熱狂する製品がある。特定ブランドの製品ではない。どんな商品であれ、「中国製造(メード・イン・チャイナ)」というフレーズが付いた商品だ。この「中国製造」は単に中国で作ったという原産地表示としての「メード・イン・チャイナ」ではない。説明書には小さな文字ではなく、前面と目立つ場所に商品のアイデンティティーを示すように大きく「中国製造」と書いてある。過去に外国では「メード・イン・チャイナ」は無視と嘲笑の対象だった。現在の中国で「中国製造」とは、世界最強の大国となった祖国に対して中国人が抱く自負心の象徴だ。
中国茶飲料のブランドのうち、茶にチーズを混ぜたチーズティー飲料を販売する「喜茶(HEYTEA)」がある。最近中国のZ世代(主に1995年以降生まれ)の間で流行するファッションを見たいならば、喜茶の店舗に行けと言われるほど若い世代に人気がある。喜茶は携帯電話ケース、かばん、靴下、カップ、バッジなどのブランド周辺商品も販売している。消費者は商品の中央に書いてある「中国製造」という文字が気に入って購入するのだという。愛国主義マーケティングが成功したのだ。今年29歳の喜茶創業者、聶雲宸氏は10月20日、シンクタンクの胡潤研究院が発表した資産20億元(約312億円)以上の富豪2398人のうち、ただ一人30歳未満の起業型富豪として名を連ねた。
「中国製造」は中国政府が米国を意識して打ち出した概念だ。中国政府は2015年に「中国製造2025」という産業政策を開始した。25年まで10年間に新エネルギー車(NEV)、ロボットなど10の先端技術製造分野で中国が世界首位を目指すとする計画だ。中国政府は補助金投入、外国企業の買収などを通じ、「中国製造2025」計画を大々的に推進した。
トランプ米大統領が中国製品に関税をかけ、貿易戦争を起こしたのも「中国製造2025」政策に脅威を感じたからだという分析がある。トランプ大統領は昨年6月、ある米メディアのインタビューで、「自分は習近平国家主席に『中国製造2025』は侮辱的だと話した。中国はもうこの表現を使わない」と発言している。
現在外国企業は中国の消費者の愛国ムードに合わせなければ生き残れず、プライドを少しでも逆なですれば、すぐに撤退させられる。米電気自動車(EV)大手のテスラは昨年、中国・上海工場で生産したモデルを発表し、「中国製のモデル3がやってくる」と宣伝して好評を集めた。これに対し、イタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナは2年前、中国系の女性モデルがはしでピザを食べる場面の広告を流し、中国を侮辱しているとの批判を受け、事実上中国事業を畳まなければならなかった。
韓国のアイドルグループ、防弾少年団(BTS)による6・25戦争(朝鮮戦争)に関する韓米友好発言も最近、「侮辱罪」に引っ掛かり、中国の一部ネットユーザーや民族主義系メディアから集中攻撃を受けた。中国でBTSを広告モデルに起用したサムスン電子、現代自動車など韓国企業は明確な情報把握を行う前の段階で、インターネット上で批判世論が強いという理由だけでBTSとの関係を絶った。
愛国主義と優越主義は中国の10-20代で最も強く表れる。中国が米国と2大国と呼ばれるほど大国に浮上するのを直接見守り、学校で「中華民族の偉大な復興」という愛国思想を絶え間なく注入された影響が大きい。彼らが消費層の中心となった中国市場で外国企業の将来の不確実性は相当大きい。外国企業が堂々と声を上げて活動できるだろうか。
北京=キム・ナムヒ特派員