記者手帳
【記者手帳】韓国製ドローンは規制で飛行できないのに中国製を購入して自慢する「Kドローンシステム」
11日午前10時56分、ソウル汝矣島の漢江公園。プロペラ16個が付いた2人乗りドローンタクシーが50メートル上空に上昇した。ドローンタクシーとはドローン(小型無人機)がタクシーのように人を乗せ、都心を飛び交うものだ。この日は西江大学、パムソム、麻浦大橋一帯を7分間飛行した。安全問題を理由に実際の乗客ではなく、米俵を載せたが、韓国国内でドローンタクシーが飛行したのは今回が初めてだ。
国土交通部とソウル市が共同で実施した今回のイベントの趣旨は、開発中のドローン管制システムの適用だった。ドローン数機が空中で安全に飛行するためには、無線データ通信技術を利用し、衝突しないように間隔を空けなければならない。政府はこの管制システムに「Kポップ」「Kビューティー」「K防疫」のように「K-ドローンシステム」という名前まで付けた。政府は「ソウル中心部で韓国初の飛行場があった汝矣島を飛行することにさらに大きな意味がある」と自慢した。
しかし、今回のイベントに対する反応は政府の思惑通りではなかった。インターネット上ではイベントの主人公であるドローンタクシーが問題にされた。テスト飛行に使われたのは中国の億航(EHang)製の「EH216」だった。コメント欄には「中国製ドローンの宣伝行事か」「血税を中国メーカーにつぎ込むのか」といった批判が相次いだ。ソウル市は同機種を3億ウォン(約2800万円)で購入した。中国製ドローンが青空を飛ぶ間、国産製品は全てイベント会場の地面に展示されていた。それも大半は模型だった。国内では現代自動車、ハンファシステムズなど大企業と中小企業、韓国科学技術院(KAIST)などがドローンタクシーを開発しているが、まだ飛行可能なドローンはない。国土交通部とソウル市も「国内製品にはまだ実際に飛行可能な製品がなく、中国のモデルでテスト飛行を行った」と説明した。
全世界は今、未来の都心交通手段として、ドローンに注目している。韓国政府も2025年にドローンタクシーのモデルサービスを開始し、28年に本格的に商用化するというバラ色のビジョンを示している。しかし、実際には都心でのドローン飛行を禁止するなどさまざまな規制で韓国のドローン産業は発展できずにいる。その間に中国などでは政府の支援をバックにドローンの技術と産業が急成長した。それだけに今回のイベントには「自動車で言えば、完成車一つない国に信号機を作ってテストするようなものだ」という皮肉が聞かれる。
郭来乾(クァク・レゴン)記者