韓国与党・共に民主党は27日に議員総会を開催し、5・18光州民主化運動に関連する虚偽の事実を流布する行為を厳しく処罰する法案(別名「歴史歪曲〈わいきょく〉処罰法」)を党議決定した。民主党はさらに、5・18真相調査委員会に強制捜査権を与える特別法(5・18特別法)も党議として推進することにした。民主党は174人の議員全員が共同提出者として法案に名称を付与する予定だ。しかし名誉毀損(きそん)罪など従来の刑法でいくらでも処罰が可能な行為について、これを新たな処罰法を制定して対処することを巡っては、法曹界から「憲法で保障される良心と表現の自由を過度に侵害する」として違憲と指摘する声も上がっている。執権勢力の歴史観を制度として強制する歴史一方主義に流れる恐れがあるとの指摘もある。

 民主党はこの日の議員総会で党論として確定した二つの5・18関連法案を国会議案課に提出した。歴史歪曲処罰法を代表として提出した李炯錫(イ・ヒョンソク)議員は「今回の通常国会の会期中に法案を成立させたい」として「今後5・18歪曲や非難が繰り返されないようにしたい」と述べた。5・18特別法を代表として提出した薛勲(ソル・フン)議員は「(野党)国民の力が今回の法案を巡って駆け引きするみっともない行動を取った場合、断固としてやり抜くだろう」と述べた。野党が反対した場合、与党単独による法案の強行採決も辞さないということだ。

 歴史歪曲処罰法は5・18民主化運動を否認・誹謗(ひぼう)・歪曲・捏造(ねつぞう)あるいはこれについて虚偽の事実を流布した場合、7年以下の懲役または7000万ウォン(約650万円)以下の罰金に処すると定めている。第20代国会でも提出されたが、違憲との見方が根強く破棄された。ところが民主党は今回、党議決定した法案を改めて提出し「政府の発表・調査によって明確な事実として確認された部分」について「虚偽の事実を流布した場合は処罰する」という内容を新たに追加した。芸術・学問・報道などの行為も処罰の対象としたことで、憲法が保障する「良心と表現の自由」を侵害する恐れがあるとの懸念も持ち上がっている。良心と表現の自由を主張してきた民主化運動勢力が、自分たちの主張と異なる声は容認しないというのだ。さらに刑法上の名誉毀損罪はその量刑が「5年以下の懲役」となっていることから、「5・18に関してのみあまりにも厳しく処罰するのは公平性にも反する」との声も出ている。

 5・18特別法は、今年初めに発足した5・18真相調査委員会による調査の権限とその範囲を拡大する内容が骨子となっている。調査対象者が資料の提出を拒否した場合、検察に家宅捜索令状の請求を依頼できるようにすることで、調査委員会が事実上の「令状請求権」を持つようになる。真相解明のためにやむを得ないと判断された場合、調査委員会が政府に個人情報を含む資料まで要求できるとする内容も含まれている。さらに調査委員会による「動向命令」に応じない場合の過料は1000万ウォン(約92万円)から3000万ウォン(約280万円)に引き上げられた。調査委員会に事実上の「無限調査権」を与えるということだ。調査委員会の規模は従来の50人から70人に増やし、活動期間も2年から3年に延長される。国民の力からは「超法規的調査委員会を立ち上げようとしている」との批判が出ている。

 民主党は5・18関連法案の党論採択を皮切りに「民主党版歴史の書き換え」に力を入れようとしている。民主党は「旅順事件」「済州4・3事件」などについても「改めて真相解明が必要」として新たな法律の取りまとめを始めている。民主党内からは、「1972年の10月維新以降に起こった国家暴力を解明すべき」として「維新清算特別法」の制定を求める声も上がっている。野党各党からは「現在の与党勢力の歴史観と異なる見方は全て遮断するという違憲的な発想だ」と指摘する声が相次いでいる。

ホーム TOP