コラム
【朝鮮日報コラム】苦ければ吐き出し、甘ければ飲み込む統計
韓国のマンション売買・賃貸価格を調査している代表的な二つの機関が、韓国鑑定院とKB国民銀行だ。ところがこの2機関の統計数値には差がある。例えば8月20日発表の週間住宅価格・賃貸価格(8月13日基準)統計で、鑑定院はソウルのマンション売買価格が0.02%、賃貸価格が0.12%上昇したと示した。ところがKB国民銀行はそれぞれ0.44%、0.38%上昇したと発表した。
最近、韓国政府が不動産政策の効果を説明する際に数値が低い鑑定院の統計を引用すると、「韓国政府は有利な数字だけ引用している」との指摘が出た。こうした論争が続いたことから、洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相は8月20日、国会で「鑑定院は呼び値と実取引価格を調査して取引可能な市場価格を反映し、KB国民銀行は呼び値を調査して呼び値を反映する。鑑定院は調査員が調査を行い、KBは現職の公認仲介士(不動産取引仲介の資格保持者)の意見を集約して調査する」と答弁した。洪副首相の言葉だけから見れば、KBの統計の信頼度はガクンと落ちる。
しかし洪副首相の答弁は事実と異なる。KBも鑑定院のように、協力仲介業者から呼び値だけでなく実取引価格も取得している。ところで、実取引価格は国土交通部(省に相当)の公開システムに登録されるまで1カ月ほどかかる。このシステムでは週単位のリアルタイム変動を伝え難い。だから鑑定院とKBはいずれも公認仲介士を通して実際に取引された金額を把握し、取引がない場合には最近の取引例などを参照して「取引可能な価格」を推定し、統計を作る。このプロセスまではどちらも同じだ。ただし、鑑定院では専門の調査員が鑑定評価・取引先例などを参照して補正作業を行う。鑑定院側は「KBの統計は、公認仲介士が入力プロセスで呼び値を水増しすることがあり得る」とした。逆に専門家らは「鑑定院の資料は、調査員の補正プロセスに韓国政府の意図が反映されて歪曲(わいきょく)の可能性がある」と指摘している。
問題は、統計に対する韓国政府の態度だ。韓国政府は、マンションの公示価格算定の根拠として実取引価格とKBの時価を挙げている。税金をかける公式資料としてKBの統計を活用しているのだ。昨年末の「12・16対策」で時価9億ウォン(現在のレートで約8000万円)を超える住宅の融資規制を強化した際、9億ウォンは「KB時価もしくは鑑定院時価のうち高い方の価格」を判定基準に用いるとした。ところが最近は、メディアや市民団体がKBの統計を根拠に不動産政策を批判するたび「民間の統計は信頼できない」というような態度を見せてきた。自分たちに有利であればKBの資料を持ち出し、不利であれば「信頼できない統計」とおとしめているのだ。そして賃貸難が深刻化すると、今度は賃貸の統計まで変えたいという。統計粉飾でいつまで政策の失敗を隠せると思っているのだろうか。直ちに暮らしが脅かされる国民は、そんなに愚かではない。
アン・ジュンホ産業1部次長
◆韓国の家計債務比率が対GDP比97.9%で世界1位、日本は?