社説
【社説】「表現の自由」は政権側にだけあるという判決
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を共産主義者と呼び、裁判にかけられていた高永宙(コ・ヨンジュ)弁護士が、控訴審で一審の無罪判決が覆り、懲役10カ月、執行猶予2年を言い渡された。高弁護士は2013年、あるイベントで「文在寅は共産主義者であって、この人物が大統領になったら国が赤化されるのは時間の問題」と発言した。検察は文大統領が就任した直後の17年9月、高弁護士を起訴した。
一審の裁判部は「主観的評価に伴う意見の表現」だとして無罪を言い渡した。憲法上の「表現の自由」に属し、処罰できないというのだ。「公的な存在(公人)の影響が大きければ大きいほど、イデオロギーに対する広範な問題提起が許容されるべき」とも判示した。二審では政権側の判事が裁判を担当し、全てがひっくり返った。二審の崔瀚敦(チェ・ハンドン)判事は、金命洙(キム・ミョンス)大法院長(最高裁長官に相当)就任後に韓国の裁判所を牛耳っている「国際人権法研究会」の中心メンバーといわれる。
高弁護士が「共産主義者」と言ったのは、具体的事実を適示したものというより意見の表明と言えるが、崔判事は「虚偽事実の適示に伴う名誉毀損(きそん)」だとした。また「文大統領の社会的評価を阻害し、表現の自由を逸脱した」と判じた。2018年に大法院は、李正姫(イ・ジョンヒ)元統合進歩党代表夫妻に対して「(北朝鮮に追従する)従北」「主思(主体思想)派」という表現を用いることは名誉毀損に該当しない、とした。それと正反対の解釈だ。
判事によって法の解釈や判決が違うということはあり得る。しかし最近の状況は、そういう常識的な範囲を超えている。大法院は、テレビ討論でうそをついた李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事について「積極的に虚偽事実を表明したものでない限り処罰できない」として無罪判決を下した。与党側は「表現の自由を伸長させる判決」と歓迎した。この国で「表現の自由」は政権側にのみある。
◆世界報道自由度ランキング韓国42位、米国45位、日本は?