韓国政府が不動産政策の失敗で住宅賃貸市場が混乱したことを受け、統計方式の見直しに乗り出した。これまで政府は最低賃金を急激に引き上げ、雇用も混乱を招いた際にも高齢者・アルバイトの雇用を増やし、雇用統計が改善したように装った。所得分配が悪化すると、統計調査方式を変更し、改善したような数字を示した。誤った政策を変更することが根本的な処方となるはずだが、統計に手を付けることが習慣化したと指摘されている。

 19日の政府ソウル庁舎で開かれた「第3次不動産市場点検関係閣僚会議」に出席した洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相は「現行の賃貸統計は(契約の)確定日の認定を受けた賃貸世帯などを対象としているため、慣例上確定日の認定を受けない更新契約は統計に反映されていない」とし、「新規契約と契約更新がいずれも含まれるように統計調査の見直し案を検討していく」と表明した。これは先月末、賃料上限制、契約更新請求権制度を盛り込んだ改正住宅賃貸借法が施行され、賃貸保証金の上昇や物件不足など市場が混乱していることから、統計に手を加えるという意味と受け止められている。政府は「賃貸借法改正による賃貸保証金安定効果を正確に反映するためだ」としているが、「政策の失敗による市場の歪みを認めず、統計を変更する方式で責任逃れをしようとしている」との批判を受けている。

 洪副首相の発言は改正賃貸借法の施行以降、ソウルのマンション賃貸保証金相場が急騰している状況を意識したものとみられる。KB国民銀行によると、10日時点で集計したソウルのマンション賃貸保証金は直近の1週間で0.41%上昇し、前週(3日時点)の0.21%に比べ、上昇率が倍になった。マンションに続き、オフィステル(オフィス兼用可能なマンション)の平均賃貸保証金も6月に2億47万ウォン(約1800万円)と2億ウォンの大台を突破したのに続き、先月には2億100万ウォンまで上昇した。不動産情報業者の「アシル」によると、今月17日現在でソウルの賃貸保証金方式によるマンションの売却物件は先月29日に比べ26.5%減少した。

 しかし、賃貸統計見直しの必要性と効果について、専門家は疑問を投げ掛ける。まず、洪副首相の言及とは異なり、これまでの統計が新規契約に偏っていることはないとの指摘だ。賃貸保証金を引き上げない「黙示的更新」の場合、賃貸双方の合意に基づき、再契約時に契約書を新たに作成しないことはあるが、保証金を少しでも引き上げた場合、契約書を改めて作成し、確定日の認定も受け直すのが一般的だ。政府が活用する韓国鑑定院の月間賃貸保証金統計も単純に確定日だけを基準に統計を作成しているわけではない。確定日情報を基本として、鑑定院職員が希望価格などの相場情報を反映し、「取引可能な価格」を算出して統計を作成する。韓国資産管理研究院の高鍾完(コ・ジョンワン)院長は「今は改正された賃貸借法による市場混乱を収拾することが先決だ」と話した。

 今政権に入り、統計粉飾論争が頻発している。所得分配統計が代表的だ。2018年1-3月に所得分配倍率が過去最悪となると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「最低賃金引き上げによるプラス効果は90%」だと我田引水的な解釈を行ってすぐ、黄秀慶(ファン・スギョン)統計庁長を電撃更迭した。姜信ウク(カン・シンウク)現庁長の就任後、統計庁は標本集団を8000世帯から7200世帯に減らし、設問では家計簿記載方式に調査方式を変更した。すると、以前の方式では5.8倍だった所得分配倍率が5.18倍に低下した。同倍率は上位20%の所得を下位20%の所得で割ったもので、数値が高いほど所得の不平等が深刻であることを意味する。調査方式を変更した結果、所得分配統計は時系列が途切れ、過去との比較が不可能な不完全統計になってしまった。

 統計方式に手を加えるのではなく、政府が市場に直接介入し、事実上統計を歪めるケースもある。雇用統計が代表的だ。18年に雇用統計が悪化すると、政府は高齢者雇用や講義室の消灯といった青年のアルバイトを大幅に増やした。その結果、19年からは雇用統計が改善したかのように見える効果を生んだ。

 政権に有利な統計を誇張し、不利な統計は見て見ぬ振りをするケースも多い。統計庁が昨年10月に発表した「経済活動人口調査勤労形態別付加調査」では非正社員の労働者が前年比で86万7000人増えたことが分かった。17-18年には3万6000人の増加にとどまっていたが、非正社員ゼロを掲げる現政権で非正社員が急増するという逆説的な現象が起きた。すると、姜信ウク統計庁長は異例のブリーフィングを行い、「調査方式が変わったので、過去と比較してはならない」と何度も強調した。しかし、統計庁が運営する国家統計ポータルは19年の調査結果を以前と調査と連続して公開している。時系列の断絶を宣言するほど調査方式が大幅に変更されていないことを自ら認めた格好だ。

チェ・ギュミン記者

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