ピープル
ピッチに立った53歳三浦知良「ゴールしたい。情熱ある限り戦える」
5日夕、日本プロサッカー3大タイトルの一つ、Jリーグカップの試合が行われた鳥栖スタジアム(佐賀県鳥栖市)。前半30分、髪に白いものがまじり、顔にはシワもあるアウエーチームのベテランストライカーが素早く体をよじってヘディングを試みた。ゴールキーパーが倒れ込みながらセーブしてゴールはならなかったが、この日、両チームあわせて初めて飛び出したゴールを脅かすシーンだった。
その瞬間、得点に失敗して天を仰ぎ、悔しがる彼に、敵地・鳥栖スタジアムの地元ファンたちが拍手を送るという異例の光景が繰り広げられた。このストライカーこそ、1967年2月26日生まれで、この日で満53歳5カ月10日という横浜FCの三浦知良だ。三浦は同日のサガン鳥栖戦出場でJリーグカップ歴代最高齢出場記録を更新した。2017年に土屋征夫(1974年生まれ)が立てた満42歳10カ月という記録を10歳以上も上回った。
三浦は以前も「高齢タイトル」で世界を驚かせたことがある。2017年3月にJリーグ2部でゴールを決め、世界最高齢得点記録(正規リーグ)でギネスブックに名前を連ねた。天皇杯最高齢出場記録も三浦が作った。しかし、最近1年間は公式戦に出たことがない。年齢も年齢なうえ、新型コロナウイルスでリーグも中断された。そして試合再開後、チームが4連敗に陥ると、横浜FCの監督はムードを変えるための切り札として三浦を出場させた。試合当日、三浦がスタメンに入っていることが発表されると、日本では経済紙である日本経済新聞まで電子版で速報を打つほど興奮した。
キャプテンマークを付けて出場した三浦は、キックオフ直後から激しいタックルでムードを盛り上げた。試合後、「チームメート全員に闘争心、気合を見せたかった」と語った。後半18分に三浦が交代になった後、チームメートがアディショナルタイムに劇的なゴールを決め、横浜FCが1-0で勝って連敗を断ち切った。
三浦のヒーローのような活躍ぶりは話題になった。インターネット上では「新型コロナウイルスによる憂うつな気分に希望を与える選手」というコメントも寄せられた。読売新聞は社会面まで割いて三浦の出場を報じた。三浦は同紙に「大変な時間を過ごしている人が多い中、お客さんの前でサッカーができる。本当に幸せだなと思った」と語った。
三浦は、現役時代にDFだった大韓サッカー協会・崔英一(チェ・ヨンイル)副会長との「韓日戦ライバル対決」で韓国のサッカーファンたちにもよく知られている。崔英一副会長より1歳年下の三浦は35年間にわたり「現役」生活をしている。驚くほど長期にわたる現役生活は、機械のような自己管理と勝負欲のおかげだとの分析もある。三浦は「先発出場」という確固たる目標を立てて、ほかの選手よりも数カ月早くシーズンに備える。練習開始の2時間前に練習場に出て、練習後は必ず冷水・温水交互浴などで体をケアする。
一部では、50代の選手をプロの試合に出場させることについて、「わざわざヒーローを作ろうとしている」との指摘もある。だが、所属チームの監督は「53歳でプレーを続けられるというだけでも尊敬に値する。チームに良い影響を与えている」と批判を一蹴(いっしゅう)した。5日の試合で決勝ゴールを決め、三浦のところに走って行ってハグしてもらった瀬沼優司は「三浦選手が『チャンスは来る』と励まし続けてくれたので、本当にありがたかった」と語った。三浦は日本のメディアとのインタビューで、「ゴールもしたいし、チームに貢献したい。毎日、若い選手と競い合うこと。そこに向かう情熱がある限り、自分は戦えると思っている」と語った。