韓国政府・与党および韓国大統領府が30日に打ち出した権力機関改編案によると、情報機関の国家情報院(国情院)は「対外安保情報院」に名前を変更し、国内情報活動と対共捜査業務を廃止して警察に渡すことになっている。

 朴智元(パク・チウォン)国情院長は30日、「国情院改革の骨子は国内政治介入の遮断、対共捜査権移管と国会による民主的統制の強化」と語った。こうした内容の国情院法改正案が国会を通過したら、国情院は1961年の中央情報部創設以来の非常に大きな変化を迎えることになる。現行の国情院職制における第1次長(外国・北朝鮮)、第2次長(テロ・対共捜査)、第3次長(科学捜査)のうち、第2次長傘下の対共捜査業務が警察に移る見込み。国情院はサイバー・経済安全保障業務に力を注ぐというわけだ。

 しかし安全保障の専門家らは「国情院の対共捜査権廃止で、北朝鮮スパイの捜査がきちんとできるのか」「国際情報活動と防諜(ぼうちょう)は別々にはできない有機的関係にある」と指摘した。

 警察大学公安問題研究所研究官出身のユ・ドンヨル国家情報学会首席副会長は「このところ北朝鮮はスパイを直接派遣するよりも、第三国に迂回(うかい)させて送り込む傾向が強い」とし「数十年にわたり防諜業務を遂行してきた国情院の国際情報活動網を警察が代替するのは無理がある」と語った。国情院の北朝鮮情報と警察の対共捜査が切り離された場合、捜査力が弱まることもあり得るのだ。

 国情院の対共捜査権が警察に移管されたら、対共情報業務は当分、国情院が受け持つ可能性が高い。その後、情報収集業務まで徐々に警察へ移譲するという案も持ち上がっている。しかし、スパイの通信分析など警察の対共科学情報分析のレベルが国情院より低い状況では、数十年間積み上げてきた国情院のノウハウを短期間で警察に伝授するのも容易ではないという指摘もある。

 北朝鮮監視の過程で、米国中央情報局(CIA)など主な情報機関との業務協力にも支障が生じかねない、という懸念もある。警察の対共捜査は国情院に比べ政界の圧力に対して脆弱(ぜいじゃく)でもあり得る、という指摘もなされている。ある専門家は「国情院の情報活動は合法・非合法のラインを行き来しつつ防諜の力量を高めてきた」とし「逆に警察は、組織構造や性格上、こうした業務が不可能」と語った。警察幹部は国情院に比べ、外部との接触がひんぱんだ。

 いわゆる「国情院改革」は、文在寅(ムン・ジェイン)政権が2017年の発足後から推進してきた中心的課題だ。既に任期の序盤、国内情報部門と内部監察部門をなくすなど、2度の組織改編を行った。18年にも、警察に「安保捜査処」を新設して対共捜査権を移譲する案を発表したことがあった。

 国情院出身で与党「共に民主党」所属の金炳基(キム・ビョンギ)議員が、間もなく国情院法改正案を発議する予定だ。改正案には国情院の名称変更、対共捜査権廃止のほかにも▲国会情報委員会・監査院の外部的統制強化▲監察室長ポストの外部開放▲執行統制審議委員会の運営など内部的統制の強化▲職員の政治関与など違法行為の際の刑事処罰強化-などといった内容が盛り込まれる見込みだ。

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