韓国疾病管理本部が国民3055人の血液に新型コロナウイルスの抗体があるかどうかを確認した結果、1人(0.03%)だけが抗体を持っていることが分かったと9日、明らかにした。今年1月20日に国内で新型コロナウイルス感染症の感染者が発生して以降、抗体を初めて検査した結果だ。新型コロナウイルス診断検査は感染が疑われる症状がある人や感染確定者の接触者が同ウイルスに感染しているかどうかを検査するものだが、抗体検査は症状や接触がなくても同ウイルスに感染したことがあるかどうかを調べるものだ。韓国の抗体保有率は米ニューヨーク(21.2%)、英ロンドン(17%)、中国・武漢(3.2%)、日本・東京(0.1%)よりも低かった。

 抗体保有率が低いということは、防疫当局が把握できていない隠れた感染者がそれだけ少ないという意味だ。しかし、疾病管理本部や専門家らは「今回の結果を『韓国の隠れた感染者が他国よりも少なかった』と解釈するのは無理だ」と話す。調査人数が少ない上、特に韓国の累積感染確定者の52%を出した大邱地域では一人も検査をしていないからだ。疾病管理本部は「7月から大邱市民を含めて1万人の追加抗体検査をする」と説明した。

■「調査対象少ない上、大邱では実施なし」

 今回の調査対象は、毎年実施する国民健康栄養調査対象者1万人のうちの1555人と、冠岳区・衿川区などソウル西南圏5区で病院に来た患者1500人だった。今年1月以降、国内で行われた新型コロナウイルス検査は、発熱や咳など同ウイルスの症状があると疑われる患者や、海外からの入国者、感染確定者の接触者にウイルスがないかどうかを確認するための診断検査だった。一方、今回の検査は診断検査の結果、陽性判定を受けたことがない人が同ウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる検査だ。新型コロナウイルスに感染した後、10-15日経過すれば同ウイルスと戦う「中和抗体」ができるが、この抗体が血液中にあるかどうか調べた。今回の調査結果通りなら、国内で隠れた感染者は平均2000人弱という意味にも受け取れる。

 ただし、今回の抗体保有率調査を通じて、大韓民国全体の新型コロナウイルス抗体保有率を確認するのは難しい、と防疫当局では話している。その第一の理由は、今回の調査は累積感染確定者6926人で、国内最多の感染者が発生した大邱広域市の標本が一つもなかった時点での調査だからだ。国民健康栄養調査は全国17広域市・道の住民が均等に分布するように調査対象を選定したのにもかかわらず、今回の抗体検査対象となった1555人に大邱市・大田市・世宗市は入っていなかった。中央防疫対策本部の権ジュン郁(クォン・ジュンウク)副本部長は「8日に関連分野の専門家会議で検討した結果、新型コロナウイルス感染者の集団発生地域である大邱市など一部地域が含まれていないので、代表性の確保が不十分だ(との結論に至った)」と9日、語った。

■「抗体検査は少なくとも3万人に増やすべき」

 高麗大学九老病院感染内科のキム・ウジュ教授は「精度を高めるには抗体検査母数を少なくとも3万人以上に拡大してこそ、より正確な流行状況を知ることができるだろう」と語った。政府は今後、国民健康栄養調査7000人、大邱市・慶尚北道の住民3000人など1万人を対象に追加抗体検査を実施する計画だが、この程度の規模の調査では正確な抗体陽性率を把握するのに限界があると指摘されている。

 医療関係者らが抗体検査の結果に注目しているのは、抗体保有者が全人口の60%を超えれば「集団免疫」が確保され、感染症の流行が収まると期待しているからだ。だが、今回の調査で抗体保有率が低かっただけに、新型コロナウイルス感染を集団免疫により防ぐのは難しいという声が上がっている。

 抗体ができたら再び新型コロナウイルスに感染しない、という科学的根拠もない状況だ。大韓診断検査医学会のイ・ヒョクミン感染管理理事(延世大学医学部教授)は「2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者のほとんどは約1年で免疫力が消えた。最近の研究では『新型コロナウイルスに感染してから2カ月が経過すると、20-30%は中和抗体が急激に減少した』というものもある」と語った。

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