南北関係
米国務副長官来韓目前に…崔善姫、文大統領の構想を足蹴に
北朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ)第1次官が4日の談話で「米国とは向かい合って座る必要がない」との考えを発表したことで、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が意欲を示している「今年下半期の米朝首脳会談構想」が推進段階からつまずいてしまった。
崔次官は談話で「朝米(米朝)対話をあちらの政治的危機を抑えるための道具としか考えない米国とは向かい合って座る必要はない」と切り捨てた。これに先立ち青瓦台(韓国大統領府)は今月1日「文大統領は6月30日に行われた韓EU(欧州連合)首脳会談で『米国の大統領選挙前に朝米が再び向かい合って対話ができるよう、全力を尽くす計画』との考えを示した」と発表したが、崔次官の談話はそれからわずか3日後に出された。米国務省のスティーブン・ビーガン副長官兼対北朝鮮政策特別代表の来韓を3日後に控え、北朝鮮が韓国と米国に対して同時に「現状での米朝対話の可能性」を一蹴した形だ。
崔次官は談話で「われわれの記憶においてさえ、索漠と忘れつつあった朝米首脳会談という言葉が数日前から話題に上り、国際社会で注目を集めている」と言及した。その一方で特に文大統領を意識したかのように「当事者であるわれわれが何を考えているか全く意識もせず、下手な仲裁の意志を表明する人間がいる」とも指摘した。文大統領による米大統領選前の米朝首脳会談推進発言以降、韓米の外交関係者の間では「10月の板門店での米朝会談推進説」などが持ち上がっている。これに対して崔次官は「朝米関係の現状を無視した首脳会談説が世論化されていることについてはあぜんとせざるを得ない」とし「すでに行われた首脳会談での合意も眼中になく、対朝鮮敵対視政策に執拗(しつよう)にこだわる米国と、果たして対話や取引が成立するだろうか」と疑問を呈した。
崔次官は「米国が今なお、交渉のようなものでわれわれを揺るがすことができると考えているなら、それは誤算だ」「われわれはすでに米国の長期的な脅威を管理するための、より具体的な戦略的計算表をまとめている」と明らかにした。さらに「どこぞの誰かの国内政治日程といった外部的変数によって、わが国の政策が調整や変更されることはないだろう」とくぎを刺した。米国のトランプ大統領の再選に向けたイベント次元での首脳会談には応じない意向を明確にしたようだ。
ただしその一方で崔次官は「われわれと新たな枠組みを築く勇断を下す意志もない米国」と表現することで、今後の交渉の余地も残した。談話には米国に対する露骨な非難メッセージも含まれていなかったため、外交関係者の間では「北朝鮮は取りあえずメッセージの水位を調節した」との評価も出ている。
崔次官の談話は、文大統領が今月3日に「朴智元(パク・チウォン)国家情報院長内定」という破格の人事を通じ、徐薫(ソ・フン)安保室長-朴智元・国家情報院長-李仁栄(イ・インヨン)統一部(省に相当)長官-鄭義溶(チョン・ウィヨン)・イム・ジョンソク安保特別補佐官など、対北朝鮮政策における人材を安保ラインの前面に布陣させた翌日に出た。今年初めに「独自の南北協力」を発表したものの、先日の北朝鮮による開城南北共同連絡事務所爆破挑発以降、米朝首脳会談のカードを取り出し、さらに安保政策担当者の改編という「勝負の一手」まで出した文大統領としては、崔次官の今回の談話によって一層頭を痛めるしかない。青瓦台のある幹部は5日、今回の国家情報院長人事について「完全に文大統領の決定」とした上で「過去の歴史よりも国政と未来を考えたもの」と説明した。しかし北朝鮮が文大統領に対して事実上「米国を動かせなければ、韓国の役割は何の意味もない」とのメッセージを送った中、新たな安全保障政策担当者も「鄭義溶・安保室長を除けば米国ではなく北朝鮮通ばかりのため、限界は明らか」との指摘も出ている。
世宗研究所米国研究センターのウ・ジョンヨプ所長は「崔善姫次官の談話は米朝対話そのものを拒否したというよりも、米国が全面的な制裁緩和など枠組みを変える新たなカードを持ってこなければならないという圧迫メッセージだ」「しかし米国もこれを受け入れられないため、米朝対話は最終的には空転する可能性が高い」との見方を示した。