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「韓国軍がベトナム戦争で民間人虐殺」、ソウル教育庁の教育資料が物議
ソウル市教育庁(教育委員会に相当)が6・25戦争発生70周年を迎えてこのほど発刊した教育用資料「東アジア、平和にもう一度読む」の一部内容が偏向的だとして論議を呼んでいる。
聯合ニュースなどが30日に報じたところによると、この冊子のある章「韓国史の鏡、まだ終わらない記憶の戦争、ベトナム戦争」では、ベトナム戦争当時の韓国軍によるベトナム民間人虐殺疑惑を既成事実として扱っている上、参戦の理由に関しては金を稼ぐための動機だと記述している。この資料は「契機教育資料」として配布されたが、契機教育とは、特定の記念日などの際に、児童・生徒に教育課程では扱われないテーマを教えるものだ。教育庁は、ソウル市内の中学・高校728校全てにこの教育資料を配布し、授業と学校教育活動に活用するよう要請した。この冊子の執筆にはハ・ジョンムン韓神大教授と高校教諭5人が参加した。
執筆陣は、韓国軍のベトナム戦争参戦の背景について「朴正煕(パク・チョンヒ)政権の参戦の大義名分は、共産世界から自由世界を守るためというものだったが、実際にはベトナム派兵によって在韓米軍の撤収を阻止して安保面を保障してもらうとともに、派兵の見返りとして米国から経済的・軍事的援助を獲得し、ベトナム特需を通じて外貨を稼ぐ、という実利が作用して下された決定だった」と記述した。
ベトナム戦争に参戦した軍人らの派兵支援の理由としては「韓国生活に対する不安、外国生活に対する憧れ、上官の命令、愛国心などがあったが、やはり最大の理由は金銭的な理由、すなわち家族の経済的困難を解決するためだった」と説明した。
この冊子では、韓国とベトナムの間で依然として論争の種になっている韓国軍のベトナム民間人虐殺疑惑を事実であるかのように扱っている。
主な内容を見ると、「ベトナム戦争でも民間人虐殺がありました。米軍による『ミライ(ソンミ村)虐殺』、北ベトナム軍とベトコンによる虐殺、韓国軍による虐殺もあったといいます」と記述している。
その上で「韓国軍による民間人虐殺事件が初めて問題となったのは1968年にあった『フォンニィ・フォンニャット村事件』で、韓国軍は当時、虐殺がなかったと公式に否定したが、米国の資料館の文書管理所で2000年6月1日付で機密解除となった駐ベトナム米軍司令部調査報告書には、韓国軍による民間人虐殺に関する内容が写真と共に収録されていた」と説明した。
この冊子の最後では「ベトナム人の立場で、また参戦軍人の立場で、民間人虐殺について考え、この問題にどのように向き合うべきか調べてみましょう」と生徒らに提案していた。
これまで韓国政府は、ベトナム戦争当時の韓国軍による民間人虐殺を公式的に認めておらず、ベトナム政府も韓国政府に謝罪を要求してはいない。
ソウル市のチョ・ヒヨン教育監(教育委員長に相当)は、この教育資料について「戦争、分断、国家暴力、嫌悪と差別などが招いた悲劇の東アジアの歴史を振り返り、悪条件の中でも平和を渇望して実践した人々の足跡を通じ、民族主義、排他的国粋主義、自民族中心主義から脱却して民主主義、平和、人権という観点から平和と共存する新たな東アジアの未来を共に開いていこうという内容を盛り込んだ」と説明した。
しかし、ベトナム戦争参戦者団体は、教育庁の冊子が偏向的だとして批判した。大韓民国越南戦(ベトナム戦争)参戦者会の関係者は「民間人虐殺など冊子の全ての内容が事実でない」として「当時、数多くの従軍記者と外信記者らが来て報道していたが、そのとき虐殺問題があったというのか」と強く反発した。また、金を稼ぐために参戦したという記述についても「共産主義から自由民主主義を守るために命を懸けて戦った対価としてお金をもらい、祖国に送って祖国の経済発展に寄与したわけで、われわれは単に金を稼ぎに行った雇い兵ではない」と反論した。