2016年7月5日、蔚山沖でマグニチュード(M)5.0の地震が発生した。国民安全処は17分が過ぎてから送信した緊急災害ショートメールで「7月4日に地震が発生した」と伝えた。あり得ないことだった。2か月後、慶州で過去最大規模となるM5.8の地震が発生したときも、災害ショートメールは8分後にようやく発信された。同じ月に台風18号(アジア名:チャバ)が慶尚南道地域を直撃した際も、見かけ倒しの災害ショートメールがやり玉に挙がった。洪水統制所が国民安全処にファックスを送り、安全処が災害ショートメールの文章を作成して送信するのに20分ずつかかったという。

 災害ショートメールは2006年に導入された。台風・洪水・大雪・地震といった災害が発生した際、国内の全ての携帯電話に送信するショートメールだ。戦争やM6.0以上の地震が発生した場合には、60デシベル以上の大きな音を鳴らす「危急災害ショートメール」が送信される。それより弱い地震の場合は40デシベルの音と共に「緊急災害ショートメール」が送信される。二つとも携帯電話が消音モードや振動モードになっていても音が出るようになっている。猛暑・黄砂などを知らせる「安全案内ショートメール」は、一般のショートメールのように、通知音または振動で受信することができる。

 2016年に「遅すぎる災害ショートメール」が世論の袋だたきに遭うと、国民安全処は、気象庁と地方自治体が直接ショートメールを送信できる方式に変更した。すると、災害ショートメール送信までの時間が6分ほど早くなり、17年11月の浦項地震の際にはショートメールの送信に数十秒しかかからなかった。ソウルではショートメールを受信した後に揺れを感じるほどだった。同時に、災害ショートメールの頻度も大幅に増えた。地方自治体が争うようにショートメールを発信するからだ。その内容も「暑いので水を飲むように。寒いので暖かい服を着るように」といった具合なので、情報がなく考えだけを伝えているとの批判が起きた。

 2年前に大田の動物園からピューマが脱走したときと、昨年初めに幼稚園が一斉休園したときも、災害ショートメールが送信され「災害の状況なのか、違うのか」と物議を醸した。新型コロナウイルスの感染拡大以降、感染者が発生したことを知らせるショートメールのほかに基本的な感染予防法を案内するショートメールが1日に何回も送られてくるため、市民たちは今や、災害ショートメールを「オオカミ少年」のように軽くあしらっている。災害ショートメールが届かないよう遮断する人も増えている。政府が運営する国民災難(災害)安全ポータルによると、ここ半月の間に地方自治体が送信した災害ショートメールは2500通に迫っている。

 先日、京畿道が「北朝鮮に向けてビラを飛ばすことは道民の命と安全を脅かす違法行為」という災害ショートメールを送信したという。全国民に手洗いや飛沫(ひまつ)防止といった教育を毎日施すだけでは足りず、災害ショートメールで政治まで行っている。京畿道に住むためには道知事の訓示メールも強制的に受信しなければならないのか。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)論説委員

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