事件・事故
麻浦の慰安婦施設所長が自殺か…正義連「家宅捜索や過度の取材のせい」
正義記憶連帯(正義連、旧挺対協)がソウル市麻浦区で運営する慰安婦被害者の休養施設の所長が6日夜、京畿道坡州市の自宅で死亡しているのが見つかった。警察は「他殺の痕跡は見られない」とし、自殺との見方を示した。
正義連と検察はそれぞれ声明などを出し、今回の事件に敏感に反応した。所長の自殺が正義連とその代表だった尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員(共に民主党)を巡るさまざまな疑惑に与える影響をそれぞれが懸念している格好だ。
麻浦の休養施設所長Sさん(60)は6日午後10時35分ごろ、京畿道坡州市の自宅トイレで死亡しているのが見つかった。坡州署がSさんの知人から「Sさんと連絡が取れない」との通報を受け、現場で死亡を確認した。近隣に住むLさん(66)は「夜11時ごろに消防隊員が玄関を壊す音が聞こえ。午前1時ごろに遺体を救急車に載せていった」と話した。警察は8日にもSさんの検死を行う構えだ。警察関係者は「Sさんが最後に誰と電話で話したのかなど、携帯電話の記録を確認している」と語った。
正義連は先月、慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんの記者会見で指摘された会計不正疑惑を巡り、検察の捜査を受けている。検察はSさんが管理していた麻浦の休養施設も21日に捜索した。検察はSさんの死亡が伝えられると直ちに声明を出した。正義連の疑惑を捜査しているソウル西部地検は7日午前、「故人を取り調べた事実はなく、取り調べのために出頭を求めた事実もない」と発表した。検察の捜査がSさん個人を狙ったものではないため、Sさんの圧力となることはないとの趣旨だ。検察は「揺るがずに迅速な真相究明にむけ、さらに努力していく」とした。
しかし、正義連は検察の捜査とメディアの取材を非難する声明を出した。イ・ナヨン正義連理事長は同日、「(故人は)家宅捜索以降、『人生が丸ごと否定されたみたいだ』と心理的なつらさを訴えていた」と主張した。また、「メディアの過度の取材競争で殺到する電話、呼び鈴の音、カメラによる洗礼などで不安な日々を送っていた」とも指摘した。尹議員もフェイスブックに「弔辞」として投稿した文章で、「記者が休養施設の呼び鈴を鳴らすたびに、検察が休養施設に押し寄せて家宅捜索を行い、罪人でもないのに罪人意識を持たせ、休みなく電話をかけて苦しめるたびに、一人でそれに耐えるのはどれほどつらかっただろうか」と検察、メディアを非難した。
Sさんは2004年から尹議員と縁を結んだ。Sさんは今年3月、フェイスブックへの投稿で、「尹氏と会ったのは2004年5月」であり、「休養施設で寝泊まりする人が必要だというので、釜山からソウルへと上京した」と明かした。そして、「(尹議員が)突然共に市民党の比例代表に出馬するという話を聞き、お祝いして支援しなければならないが、わけもなく残された心が重い」と書いている。
尹議員も昨年1月にフェイスブックでSさんに言及した。尹議員は「給与は80万ウォン(約7万3000円)しか差し上げられないが、それでもいいということだった。それで私たちは出会うことになった」と振り返った。尹議員は同じ文章を6日午後に投稿した後、すぐに削除した。そのタイミングで尹議員がSさんが死亡した事実を知ったのかは確認できていない。
Sさんは正義連の休養施設に泊まり込み、施設を管理し、被害者の世話も行ってきた。Sさんの坡州市の自宅周辺に住む住民は「昨年1月ごろに引っ越してきたが、灯りがついているのを1回しか見たことがないほど、家には戻っていないようだった」と話した。麻浦の休養施設で暮らす慰安婦被害者は一時3人いたが、徐々に世を去り、今は吉元玉(キル・ウォンオク)さんだけだ。
尹議員は17年4月、慰安婦被害者のイ・スンドクさんが死去すると、フェイスブックなどにSさんの個人口座を「弔慰金口座」として公表し、金銭を集めた。当時インターネットメディア「メディアモング」もSさんの氏名と口座番号が書かれた通帳の写真をツイッターにそのまま掲載し、「資金は全額葬儀費用に使われる予定だ」と伝えていた。尹議員以外で個人口座で慰安婦被害者の葬儀費用を集めた正義連関係者はSさんが唯一だ。