寄稿
【寄稿】正義記憶連帯の積弊を契機に改めて考える慰安婦問題
日本軍慰安婦被害者支援を掲げる正義記憶連帯(正義連)と、今回の総選挙で「共に市民党」比例代表で当選した尹美香(ユン・ミヒャン)元正義連理事長の、偽善と積弊が佳境を迎えつつある。5月8日、慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんの爆弾発言がメガトン級の爆風を起こした。李容洙さんは、正義連と尹美香当選人に向けて「30年間だますだけだまし、利用されるだけ利用されてきた」と語った。日本大使館前の水曜集会についても「憎悪と傷ばかりを教える。募金も被害者に使われたことはなく、どこに使われているのかも分からない」と語った。こうした「不都合な真実」は、被害の当事者である元慰安婦のほかには口に出せない。メディアや政府当局者は、正義連とその前身である韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)の実態を知っていても、これを報道したり言及したりすること自体がタブーとされてきた聖域だったからだ。李容洙さんの勇気は、こうした聖域を崩したという点で、評価されるべきことだ。
正義連の実態とは別に、この際、慰安婦問題の解決策についてしっかり考えてみるべき3点のみ提起してみたい。
第一に、慰安婦問題の最終解決法として、日本政府から明示的な国家責任認定を引き出すことのほか、いかなる次善の策も拒否するのだろうか? 明確な国家責任の認定が最善の解法であることは明らかだが、実現不可能な目標という点で、これは事実上永遠に未解決として残り、日本が歴史の重荷を負い続けていくようにするという案だ。2015年12月28日の韓日慰安婦合意に基づき、日本の国家予算から10億円を受け取ったことは、日本の間接的な国家責任認定を受け入れるという意味だと解釈され得る。日本は、国家責任が全くないのなら、慰安婦被害者支援のため国家予算を使う理由がない。韓国政府は2018年11月21日に「和解・癒やし財団」の解散を発表する一方、韓日慰安婦合意は真の解決策になり得ないが破棄や再交渉を要求するつもりはない、とした。ならばどうするつもりなのかは分からないが、韓日間の既存の合意が解決策になり得ないという考えであるなら、日本から受け取った10億円を遅滞なく返すのが道理だ。
第二に、韓国政府が掲げる「被害者中心主義」とは何か? 文在寅(ムン・ジェイン)政権が朴槿恵(パク・クンへ)政権の慰安婦合意を批判する論拠は、被害者中心主義を無視したというものだった。だが、被害者は元慰安婦なのに、挺対協・正義連だと錯覚しているのではないか? 大多数の登録された被害者は、亡くなる前、日本の適切な謝罪と補償を通した解決を望んでいた。一方で正義連としては、慰安婦問題の解決は自らの存在理由と活動空間の縮小を意味するという点で、利害関係が衝突する部分がある。15年の韓日慰安婦合意当時、挺対協は被害者に対し、日本の資金の受領を拒否するよう勧めたが、生存する被害者47人のうち36人が挺対協の勧めを無視して補償金の受領を選んだ-という事実は、挺対協・正義連と被害当事者の利害関係が相違していることを立証している。韓国国税庁のホームタックスに公示されている通り、挺対協・正義連が過去4年間に集めた後援金49億2000万ウォン(現在のレートで約4億2800万円)のうち、被害者支援に使った額が9億2000万ウォン(約8000万円)にすぎないのであれば、ほかの目的を追求するため慰安婦被害者を利用し、慰安婦被害者に寄生してきた団体だという非難を免れ難いだろう。正義連が反日を韓国の存在価値として尊ぶ勢力を代弁し、政治的打算を働かせることに魂を売ったのであれば、慰安婦被害者の利益は政治的目的に従属してしまう。韓国政府が「挺対協・正義連は被害当事者の利益を代表している」と錯覚し、慰安婦問題の解法を探ろうとしたのであれば、それは被害者中心主義を無視するものだ。
最後に、慰安婦被害者のためという名分で脱法や違法までも容認するのか? 方々に少女像を立て、慰安婦被害者らが全て亡くなった後も日本の蛮行を反すうすることは、歴史教育の観点からも必要だ。しかし、公園や記念館のような品格のある場所を棚に上げ、適法な手続きを強引に省略して道路法に違反する場所へ「違法な設置物」を据えたり、「外交関係に関するウィーン条約」に反して外交公館の安寧と威厳を害する位置を選んで設置したりすることが、慰安婦被害者のための道なのだろうか? 日本に対する復讐(ふくしゅう)はいくらやっても足りないが、過去に限りなく埋没して韓国がこれ以上壊れる必要はない。反日も重要だが、韓国にはそれより大切な価値もある。日本に対する道徳的優位を喪失したら、克日はさらに遠のく。
千英宇(チョン・ヨンウ)韓半島未来フォーラム理事長・元外交安保首席