日経アジアンレビューは18日、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)からの新規受注を止めたと伝えた。米商務省が15日、米国製の製造装置やソフトウエア使って第三国で生産された半導体を許可なくファーウェイに輸出することを禁じてからわずか3日後の対応だった。

 報道が事実であれば、世界の半導体業界は大きな衝撃を受ける。サムスン電子やSKハイニックスも同様だ。その理由は2つに大別される。

■米制裁がDRAMに拡大する可能性否定できず

 現在米国の制裁はファーウェイの発注を受けたTSMCなどが米国製設備でスマートフォン用のAP(アプリケーション・プロセッサー)を生産し、ファーウェイに輸出する場合のみが対象だ。しかし、この措置がDRAMなどメモリー半導体にも拡大される可能性は排除できない。

 制裁がメモリー半導体にまで拡大されれば、サムスン電子とSKハイニックスが直撃を受ける。米国の半導体設備なしではメモリー半導体も生産できないからだ。サムスン電子とSKハイニックスはファーウェイにそれぞれ年間で8兆ウォン(約7000億円)、5兆ウォンのメモリー半導体を輸出している。昨年の売上高に占める割合はそれぞれ3%、18%だ。

■ファーウェイ淘汰なら得意先喪失

 米国の制裁がそこまでいかなくても、サムスン電子とSKハイニックスにはリスクとなり得る。ファーウェイがTSMCを通じ、高性能半導体を生産することができず、市場から淘汰(とうた)される可能性があるからだ。

 半導体業界はファーウェイがTSMCに委託してきた生産分を中国のファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)に回すとみている。SMICのファウンドリーとしての技術力は低いが、他に選択肢がないからだ。SMICはTSMC、サムスン電子が推進している5ナノメートル製造プロセスにはるかに及ばない14ナノメートル製造プロセスを採用している。産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員は「14ナノメートル製造プロセスで5ナノメートル並みの性能を実現するには、チップがもっと大きくなければならず、電力消費量も増える。結局SMICでチップを生産すれば、ファーウェイ製品の性能は低下してしまう」と指摘した。世界市場で淘汰されることを意味する。

 その場合でもファーウェイにメモリー半導体を輸出してきたサムスン電子、SKハイニックスの売り上げは打撃を受ける。ファーウェイは昨年、全世界でスマートフォンを2億4050万台販売した業界2位のメーカーだ。ファーウェイの空席を中国の小米(シャオミ)、VIVO、OPPOなどが埋めることになりそうだが、そうしたメーカーが成長するまでには時間を要する。業界関係者は「長期的にはファーウェイに代わるメーカーが浮上し、半導体販売量も原状を回復するとみられるが、短期的には売上減少を避けることはできない」と述べた。

■TSMCも受注拒否なら損害大

 TSMCも今回の受注拒否による損害を懸念しなければならない状況だ。TSMCの売上高に占めるファーウェイの割合は10-15%だ。現代証券のノ・グンチャン・リサーチセンター長は「米国の半導体設備なしでは事業を営めないTSMCは、ファーウェイなど中国の顧客を失うことを受け入れるしかなかった」と分析した。

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