▲キム・シンヨン経済部次長

寄付金をもらって免税の恩恵を受ける公益法人、企業よりも正直・透明であるべき

「会計にはあちらもこちらもない」…会計が誤っていたら社会の善意を貪ることになる

 かつて働いていた報道機関で経験したことだ。慰安婦被害者支援団体が写真資料の閲覧を要請してきた。団体側は写真のキャビネットをあさり、数枚選んで、これを借りていってPR冊子に載せたいと言った。ところが、費用の話になると怒りだした。「おばあさんたちのためのことなのにカネを取るつもりか」と言った。いいことをしているという自負のせいだろうか。公益法人の関係者の中には、お金の問題でたるんでいてもいいと考えている人を少なからず見かけた。慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんの5月8日の記者会見で触発された正義記憶連帯(正義連)の不正会計問題に対しても、正義連は同様の態度で対処している。「われわれは大変な仕事をしている。会計なんて直せばいいのに、どうしてうるさく言うのか」というような恰好だ。

 この人々は「公益法人にどうして企業のような水準の会計を要求するのか」と言う。会計の専門家らに尋ねてみた。すると、公益法人の会計は企業と同じではあり得ないという答えが返って来た。むしろ、企業よりはるかに正直かつ透明であるべきだという話だった。弘益大学経営学部のユン・ジェウォン教授は、その理由をこう説明する。「公益法人は大衆から寄付金を募集することができ、政府からは税金の免除を受けます。『いいこと』をするために市民や政府のお金をもらいます。従って公益法人が一般大衆に対し、寄付金が目的の通り使われているかどうかを会計公示を通して透明に伝えるのは、ごく当然のことです。寄付者は、寄付金がどのように使われているかを知らなければならず、政府は、免税の恩恵を維持するかどうか確認しなければなりませんからね。お金をきちんと使っていないなら、社会全体をだましていることになります」

 公益法人の寄付者らは、そのお金が、団体の掲げる『いいこと』に使われることを望んでいる。韓国公認会計士会のチェ・ジュンギョン会長の表現を借りるなら「高尚なコミットメント(献身)」だ。ペ・ウォンギ弘益大学経営学部教授は「従業員と株主が企業の利害関係人だとするなら、非営利団体はお金を出す寄付者が利害関係人。掲げる目的の通りお金を使ったかどうかを知らせる透明な会計は、寄付者や社会に対する義務」と語った。こうした流れから見れば、正義連の会計公示は、一言で表現すると「でたらめ」だ。金額・用途などがおかしい例は数えきれないほどある。例えば昨年の「寄付金品支出明細書」で、支出全体の62%、4億6900万ウォン(現在のレートで約4079万円。以下同じ)を占める一番最後の内訳はこうなっている。「支払先の名称:その他 受恵人数:9999人」。もし、どこかのスタートアップ企業がこんな書類を持って100万ウォン(約8万7000円)なりとも投資を受けに行ったら、追い払われるのがオチだ。

 米国では、内国歳入庁(IRS)が公益法人の会計公示を監視している。不正会計にはきつい罰金も科する。韓国は、公益法人の会計に「寛大」だ。きちんと責任を負う部処(省庁に相当)がない。国税庁で公示は担当しているが、法人ごとに主務部処が別にあり、そして会計公示の様式自体は企画財政部の所管だ。ある会計士は「韓国の市民団体は声が大きいので、公務員が覗いてみようとは思わない」と語った。政府に余力が不足しているのなら、外部監査制度でも活用すべきところだが、それすらもいい加減だ。米国では通常、公益法人の年間総収入が25万-50万ドル(約2676万-5351万円)を超える程度でも外部監査を受けなければならない(州によって差がある)。韓国では、50億ウォン(約4億3500万円)未満であれば免除される。昨年まで、公益法人の半数以上が外部監査を免除されていた。こういう死角地帯で、寄付者のお金は危機に陥る。

 正義連の会計問題を指摘すると、「親日保守勢力の謀略」だと問い詰める人がいる。しかし、会計のように非政治的な分野もまれだ。高麗大学経営学部のイ・ハンサン教授が語る通り「会計にはあちらもこちらもない」。早起きサッカークラブからサムスン電子に至るまで、原則は同じだ。正直かつ透明でなければならない。企業の不正会計は投資者の財布の中身をかすめ取る。公益財団のでたらめ会計は社会の善意を貪る。親日・反日を問う問題ではない。

キム・シンヨン経済部次長

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