経済総合
海外進出の韓国企業「高賃金がネック、Uターンできない」
「韓国で最低賃金が急激に引き上げられるのを見て、中国に残った韓国企業の経営者からは『被害者だね』と言われた」
中国での事業を縮小し、韓国にUターンした装身具メーカーの経営者は11日、本紙のインタビューにそう答えた。新型コロナウイルスの影響でこれまで中国に依存してきた世界のサプライチェーンが揺らぎ、各国が海外に進出している自国企業を呼び戻す「リショアリング(製造業本国回帰)」政策を強化する中、韓国の企業経営者の間で懸念が相次いで示されている。安定的なサプライチェーンを確保し、経済危機を克服する方策としてリショアリングは必要だが、政府による急激な最低賃金引き上げ、労働時間の週52時間上限制など企業の負担を増大させる政策を変えなければ、企業の「Uターン戦争」に勝利できないとの味方だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、就任3周年の演説で、「韓国企業のUターンはもちろん、海外の先端産業と投資を誘致するため、果敢な戦略を推進していく」と表明し、いわゆる「リショアリング戦争」に参戦を宣言した。
■リショアリング誘うニンジン
バンク・オブ・アメリカは中国に生産施設を置く多国籍企業の80%がコロナ事態でUターンを検討しているとの調査結果を明らかにした。米政府は企業をUターンさせるための誘致策を準備している。米国家経済会議(NEC)のラリー・クドロー委員長は先月、「米政府は中国から国内に戻ってくる米製造業の移転費用を100%負担すべきだ」と述べた。他国も同様だ。日本政府は2兆7000億ウォン規模の基金を創設し、中国に進出した製造業のUターンを支援すると表明した。インドは中国に生産拠点を持つ米企業1000社余りを誘致するため、税制優遇策や労働法改正などの誘致策を打ち出した。
韓国も対策の準備に乗り出している。まず「海外進出企業の国内復帰支援に関する法律(Uターン法)」が改正され、3月11日に施行された。Uターン企業支援の対象業種をこれまでの製造業から知識サービス産業、情報通信業にまで拡大し、首都圏以外に進出するUターン企業に国有・公有財産の長期賃貸(50年)、賃貸料減免などの特例を適用することが柱だ。4月28日には産業通商資源部、大韓商工会議所、広域自治体、韓国輸出入銀行、韓国貿易保険公社、業種別団体、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)などが加わるUターン支援協議体として、官民合同Uターン支援班を発足させた。
■文大統領「割高な人件費より安心できる投資先が好まれる」…企業「人件費が問題」
文大統領は就任3周年の特別演説で、「世界は今、安い人件費よりも革新能力や安心できる投資先を好み始めた。我々には絶好の機会だ」と述べた。しかし、企業経営者の考え方は異なる。20年余りにわたり中国で事業を営み、2018年に韓国にUターンした経営者は「中国と比較すれば、韓国は労働時間が短いのに、人件費は5倍も高い」「Uターン企業には法人税免除、雇用創出奨励金支援などの優遇を行っているが、一般企業を対象とする支援と重複で適用されず、Uターン企業のための支援策を体感しにくいのは事実だ」と話した。同経営者は「中国と比べ、韓国は予測可能な環境だというメリットがあることはあるが、海外に進出している企業経営者は故国に戻った場合の負担しきれない賃金、過度の規制などを懸念している」と続けた。
韓国は企業経営が難しい環境にあるとの認識はこの経営者だけではない。韓国経済研究院が昨年11月、海外に事業所を持つ企業150社を対象にアンケート調査を実施した結果、回答企業の96%は「Uターンの計画はない」と答えた。Uターンを考えない理由としては、「海外市場の拡大が必要」(77.1%)との回答が最多だった。それを除けば、Uターンを阻む理由は全て韓国国内の企業環境のせいだった。うち最も多かったのは、高賃金が負担だとの回答だった。
実際に韓国は2013年12月にUターン法が施行されて以降、韓国に回帰した企業は毎年20社に満たない。昨年のUターン企業は16社だった。米企業のUターン促進機関「リショアリング・インセンティブ」によると、14-18年に年平均482社が本国である米国に回帰した。韓国経済研究院の秋光鎬(チュ・グァンホ)経済政策室長は「法人税引き下げ、労働改革などを通じ、生産コスト削減を支援し、企業のUターンを導かなければならない」と述べた。
ソク・ナムジュン記者