「おばあさんたちには望んでもいない心の傷を負わせたことを謝罪する」

 正義記憶連帯(正義連)のイ・ナヨン理事長は11日、ソウル市内の「人権財団サラム」で行われた会見を、慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんに謝罪することから始めた。「聖金(寄付金)がおばあさんたちのために使われず、いったいどこに使われたのか分からない」として寄付金流用疑惑を提起したおばあさんへの謝罪だった。しかしそれまでだった。

 その後の25分間、正義連(以前の挺身〈ていしん〉隊問題対策協議会)による運動の意義について説明が行われた。イ理事長は「誰も問題を提起しなかったとき、勇敢かつ献身的な数人の研究者たちが立ち上げた。この歴史を知っているのか」と主張した。「われわれがいなければ、慰安婦問題は教科書に掲載されることもなかった。皆さんは何をしていたのか。本の1冊でも読んだのか」と逆に指摘した。慰安婦被害者の人権運動における正義を独占しているかのように、その誇りは大したものだった。

 おかしなことは、イ理事長が口にした正義連運動の中心に慰安婦被害者のおばあさんたちがいなかったことだ。語られたのは活動家と研究者の献身だけだ。李容洙さんが最も中心的な対象になるべき寄付金を、いわゆる「運動をする」という活動家たちがなぜ自由に使うのか。おばあさんたちはなぜその金をまともに受け取ることもできず、どう使われたのか知ることもできないのか。

 この日の会見はメディアによる疑惑の提起から始まったわけではない。李容洙さんが寄付金の使い道を問題視したことで始まった。記者は会見の質疑で「尹美香(ユン・ミヒャン)前挺対協代表の年収と個人活動費は幾らか」と質問した。正義連側は「記者会見の趣旨とは関係のない質問だ」「金額をなぜ明かさねばならないのか」と反論した。尹前代表は20年以上にわたり挺対協と正義連を率いた人物だ。その挺対協と正義連が、おばあさんから数十億ウォン(数億円)に上る寄付金の使い道について疑われている。ところが納付された所得税額から計算した夫婦の年収が合計5000万ウォン(約440万円)ほどにしかならない尹前代表の娘が、年間1億ウォン(約870万円)近く必要な留学生活をしている。質問して当然の内容だ。

 李容洙さんが提起した疑惑について、正義連が即座に解決する最も簡単な方法がある。資金の具体的な使用の内訳を関係する資料と共に公開することだ。尹前元代表も「全ての証拠書類を出せるし、領収書は全て保管している」と述べた。そのため記者はさらに「寄付金を使った領収書の細かい内訳を公開する考えはないのか」と質問した。それに対する答えは「もうやめなさい。朝鮮日報」だった。寄付金の使用に対する透明性は寄付金を出した正義連運動の支持者らと連帯するための基礎になる。正義連はその連帯の基礎から顔を背けている。

 李容洙さんが最初に問題提起した直後、尹前代表は「おばあさんの記憶が変わった」と述べた。慰安婦被害者人権運動の根であるおばあさんの記憶まで否定したのだ。正義記憶連帯には独占的な正義しかない。そこには記憶も、連帯もなかった。

社会部=ウォン・ウシク記者

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