社会総合
韓国受験生50万人の教材に大企業・メディア不信の記述
本文に「メディア権力集中を壊すべき」
EBS側「監修で興味深いと意見をもらった」
過去の政権でも「偏向」論争
大企業・大手フランチャイズ流通企業が地域の商圏を沈滞させ、既存メディアは「メディア権力」だと表現するEBS放送の「修能特講英語」の教材は、表紙に「2021年度修能関連教材」と書かれている。今年1月16日に出版されたが、EBSでは正確な実売部数は明らかにしなかった。問題の教材は修能(大学修学能力試験。センター試験に相当)関連教材であるだけに、50万人に上る受験生の相当数が購入しただろうと入試業界では推定している。
■大企業やメディアに否定的な視点が強い
大企業・大手フランチャイズ関連の英文(195ページ)は、「正答と解説」129ページでこのように翻訳されている。「フランチャイズ企業はしばしば、より小規模の地域企業から(皆さんが使う)お金を直接持っていく。(中略)電話帳で、大手フランチャイズ企業に代わる地域の代案を探してみよ」。消費者が大企業・大手フランチャイズ企業を利用したら少数に富が集中するが、地域企業を利用したら地域社会に寄与できる、という主張内容だ。
メディア関連の英文(73ページ)は、「正答と解説」(43ページ)で「最初の段階は、メディア権力の集中を壊すことだ。われわれは超国家的な企業や広告主の制限の外に存在する独立的な代案メディアだけでなく、非商業的な公共メディアシステムもつくり出さなければならない」と訳されている。
■EBS「適切かつ興味深い」と判定された
この2本の英文は、大学教授・高校教師などからなる執筆陣が既存の英文書籍から抜粋した内容だ。通常、EBSの教材は、独自の委員会を通して選定された執筆陣が互いに検討を交わして草案を確定させ、全ての地の文について韓国教育課程評価院が監修を受け持つ。EBS関係者は「2本の英文について、評価院から『素材の適切さ』『素材が適合し興味深い』などの意見をもらった」として「特定の思想やイデオロギーに偏向したものではない」と語った。
この項目を検討したイ・ソンホ中央大学教育学科教授は「大企業に対する観点は、経済専門家らの間でも意見が分かれることがあり得るし、(8番の項目のように)偏ったメディア観を感受性の鋭い青少年用の教材に盛り込むのは正しくない」として「どうしても使わなければならないであれば賛否を同時に扱い、論理的思考力を養うのが教育的側面からは望ましい」と指摘した。
EBS修能特講教材は、過去の政権でも「偏向的」だとして論争が持ち上がったことがある。2017年には、「18年度修能特講韓国史」の教材に出てきた朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領関連の項目6点を巡り「朴正煕・元大統領の治績を中心に出題された」という論争があった。教育部(省に相当)の兪銀恵(ユ・ウンヘ)長官は当時、国会教育文化体育観光委員会の委員を務めていて「EBS修能関連教材の修能出題率が70%に達する状況で、項目そのものが非常に偏っている部分は修正されなければならない」と主張していた。ある入試専門家は「EBS教材の本文を丸暗記する生徒もいるほどなので、執筆の過程では教科書に準ずる中立性が要求される」と語った。
ユ・ソヨン記者