北朝鮮軍が今月3日に非武装地帯(DMZ)内にある韓国軍の最前方監視哨所(GP)へ銃撃を加えた際に使用した14.5ミリ機関銃(高射銃)の有効射程距離が3キロに達することが6日までに分かった。北朝鮮軍と韓国軍のGP間の距離が1.5-1.9キロである点を考慮すれば、有効射程距離内の韓国軍を狙って銃撃を加えていたことになる。合同参謀本部は今月3日に起こった北朝鮮による挑発について「意図性はない」と強調し「挑発であれば、有効射程距離の範囲内でやるのが常識」と主張していた。「挑発に使った武器の有効射程距離が1.5キロ以下のため、意図的な挑発とは考えにくい」という趣旨だった。これについては韓国軍の内外から「合同参謀本部は北朝鮮軍による挑発の意図性を縮小するため、有効射程距離の情報まで隠蔽(いんぺい)・歪曲(わいきょく)したのでは」との指摘も出ている。

 合同参謀本部が6日に国会に提出した北朝鮮軍GP保有火器の諸元によると、北朝鮮軍はGPにAK自動小銃と73年式機関銃、RPG7、14.5ミリ高射銃など6種類の火器を配備している。そのうち今回北朝鮮が挑発に使用したとみられる14.5ミリ高射銃の有効射程距離について、合同参謀本部は「3キロ」と摘示した。それ以外の火器はほぼ全てで有効射程距離が短かったが、73年式機関銃だけが1キロほどだった。これまで14.5ミリ高射銃の有効射程距離は1.4キロと伝えられていた。しかしこれは空中の目標を攻撃する際の数値だ。韓国国防安保フォーラムのシン・ジョンウ専門研究委員は「対空火器は重力の影響を受けるが、これを地上の標的を攻撃する際に使う場合の有効射程距離は長くなる」と説明した。北朝鮮軍は一般的に14.5キロ高射銃を4門まとめて対空用に使用しており、1-2門をまとめて地上用に配備している。合同参謀本部によると、北朝鮮軍は今回の挑発以外では2010年以降、合計3回の銃撃・砲撃挑発を行っているが、いずれも14.5ミリ高射銃が使用されたという。

 しかし合同参謀本部のある幹部は3日のブリーフィングで「(北朝鮮の挑発を)意図的とみるには、挑発の適切性を考えねばならない」「(武器には)最大有効射程距離があるが、挑発は有効射程距離の範囲内で行うのが一般的な常識」と主張した。当時、合同参謀本部は北朝鮮軍の挑発武器の諸元はもちろんのこと、韓国軍の具体的な対応時刻も公表していなかった。韓国軍のある関係者は「高射銃の有効射程距離は、挑発が起こった二つのGP間の距離よりも明らかに長いが、これを短いもののように説明したのは、事件を縮小する意図があったと誤解を受ける恐れがある」とコメントした。これについて合同参謀本部は「国連軍司令部と調査中の事案」との説明を繰り返した。

 一部では北朝鮮軍が特殊作戦部隊を動員し、意図的に挑発を行ったとの主張も出ている。韓南大学国防戦略大学院のヤン・ウク兼任教授は「当時は霧が深く、可視距離が1キロほどの状況だったとすれば、GPの建物は手のひらサイズよりも小さくかすかにしか見えなかったはず」として「14.5ミリ高射銃で1.5-1.9キロ離れた距離からわが軍のGPに4発の弾着群を形成するほどの射撃レベルとすれば、高射砲部隊員あるいは熟練した射撃実力を持つ特殊作戦部隊員でないとできない」と指摘した。GPでの勤務経験を持つ韓国軍のある幹部は「霧が深かったので意図的な挑発の可能性は低いと言うが、北朝鮮軍は常に曖昧模糊(もこ)な状況で挑発を行ってきた」と主張した。

 合同参謀本部が「北朝鮮による挑発への対応を迅速に行った」と見せるため、説明を歪曲したとの指摘もある。ある政府関係者は「事件当時、北朝鮮軍GPに対する銃撃の指示はGP哨所長ではなく師団長が行ったと聞いている」と伝えた。合同参謀本部は最初のブリーフィングの際「現場の指揮官」の判断で適切に措置が行われたと説明した。当時の発表からは「軍が現場で直ちに対応した」と解釈された。

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