経済総合
「韓国を輝かせた人物」に選ばれた若き科学者、薄給の研究所辞め自営業に転職
ソウルのある大学で生物化学の博士号を取得したAさん(40)は科学技術情報通信部の生物学研究情報センターが優れた論文を書いた研究者に贈る「韓国を輝かせた人物」賞にも選ばれた有能な科学者だった。しかし、Aさんは2017年、「自営業に転職する」という言葉を残し、科学界を去った。ある研究機関でポストドクター(博士研究員)として勤務していた当時の給与は月200万ウォン(約18万8000円)余り。生活苦に直面していたAさんは「科学界のことは振り返りたくもない」と話した。元同僚たちはAさんが今何をしているのか知らない。
ポストドクターは博士号を取得後、研究現場に飛び込んだばかりの研究員だ。研究に取り組む上で生産性が最も旺盛で、科学先進国では研究現場の主軸だ。「ノーベル賞は教授が取るが、その成果を左右するのがポストドクター」とも言われる。ポストドクター不在の研究は想像もできない。ノーベル賞受賞者を16人輩出した英ケンブリッジ大の分子生物学研究室は教授1人に博士研究員8人、大学院生2人の体制だ。米国立衛生研究所(NIH)はポストドクターに最低年収5万ドル(約548万円)を保障。ドイツは既婚のポストドクターに子どもが生まれた場合、契約期間を延長し、安定的な研究を支えている。
韓国のポストドクターの現実は悲惨だ。200万-300万ウォンにすぎない月給、毎年契約を更新しなければならない不安定な身分など劣悪な処遇に耐えられず、Aさんのように研究者の道をあきらめたり、海外に旅立ったりする人が少なくない。基礎科学分野の学会が加盟する基礎研究連合会は毎年排出される理工系の博士約4100人のうち1200人余りが海外に出ると推定している。