サハリン徴用被害者が出した政府相手取る憲法訴願も却下

両国関係に大きな影響与える2訴訟、何の実体的判断もせずに終了

 憲法裁判所は27日、慰安婦被害者29人や遺族らが「韓日慰安婦合意が違憲であることを確認してほしい」として起こした憲法訴願について、「憲法訴願の対象ではない」と裁判官全員一致意見で却下した。拘束力のない政治的合意に過ぎないということだ。サハリン強制徴用被害者が政府を相手取り起こした憲法訴願もやはり却下した。このため韓日関係に重要な影響を与えると予想された2つの訴訟はどちらも何の実体的判断もないまま終わることになった。

 韓日両国は2015年12月、外交長官会談後の共同記者会見で、慰安婦被害者問題に関する合意内容を発表した。2011年に憲法裁判所が「国が慰安婦問題の解決に乗り出さないのは違憲だ」と判断したことによる措置だった。日本が謝罪と反省の意を表して、韓国が設立する慰安婦被害者支援財団(和解・癒やし財団)に資金を拠出することで、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決となるという内容だった。これに対して、民主社会のための弁護士の会(以下、民弁)は2016年、「被害者を排除した合意を通じて、被害者の財産や知る権利、外交的保護を受ける権利などを侵害した」として、慰安婦被害者たちの代理として憲法訴願を出した。

 憲法裁判所は、当時の合意が法的拘束力のある条約ではなく、「非拘束的合意」に過ぎないと見なした。条約という言葉の代わりに「記者会見」という単語を使ったほか、条約締結に必要な閣議での審議や国会の同意を経ていないということだ。「日本政府の拠出金に関する部分も、その時期や方法などが定められておらず抽象であり、『最終的かつ不可逆的解決』も意味が不明瞭(めいりょう)だ」とした。このため、国民の権利を侵害する可能性自体がないと見なした。憲法訴願は、拘束力があって個人の権利を侵害する処分や法律規定に対してのみ提出することができる。

 憲法裁判所は「審判対象の合意は外交的協議の過程における政治的合意であり、歴史問題解決などのための外交政策的判断なので、これに対するさまざまな評価は政治の領域だ」とした。

 憲法裁判所はまた、サハリン強制徴用被害者らが出した「不作為違憲確認」憲法訴願については「政府がそれなりの義務を履行し、不作為と見なすことはできない」として却下した。訴願を出したハン氏らサハリン同胞たちはかつて日本の所属会社の炭鉱などで強制労働をしていた際に受け取った給与を日本の郵便貯金などに貯金するよう強制され、いまだに引き出せずにいる。日本は1965年の韓日請求権協定後に帰国して韓国国籍を取得したサハリン同胞の財産権は同協定によって消滅すると主張しているが、韓国政府は消滅しないという見解を持っている。これらの人々は2012年に「請求権協定に対する見解の違いを解決するための外交努力などをしなかった」として憲法訴願を出した。憲法裁判所はこれに対して、「(韓国)政府は2013年に日本に対し請求権問題の解釈衝突に関する韓日外交当局間協議を提案するなどして努力した」と述べた。

 昨年の大法院強制徴用賠償判決で韓日関係に大きな波紋が広がったことから、この2つの憲法訴願がどのような結論に至るかも注目を浴びた。しかし、憲法裁判所は2件とも憲法訴願の対象ではないと結論付けた。慰安婦合意は3年、サハリン事件はなんと7年を経て下された結論だ。法曹界からは「憲法裁判所は政治的に敏感な件について過度に時間を引っ張り、顔色をうかがった」と批判の声も上がっている。

ホーム TOP