韓国政府が少子高齢化に備え、兵力の削減、師範大(教育系大学)の定員調整などを骨子とする「人口構造変化対応方案」を打ち出した。今年9月の生産年齢人口拡充対策に続き、二つ目の人口対策だ。政府は今後、高齢人口の増加への対応策と福祉支出増加への管理案を追加で打ち出す計画だ。

 政府は「少子高齢化に伴う学齢人口・兵役義務者の減少は、教育・兵役システム全般に根本的な変革を求めている」としながらも、社会的な葛藤と反発が予想される何点かの「難しい決定」は先延ばしにした。学齢人口の急減で教員数の調整と教育大・師範大の定員削減が急務であるにもかかわらず、教員団体や予備教師たちの反発を懸念して検討を来年以降に先延ばしにしたわけだ。政府は先日打ち出した生産年齢人口拡充対策でも、日本式の定年延長を導入する案を、現政権の任期が終了した後の2022年ごろに検討すると表明していた。一方、安全保障に直接的な影響を及ぼす兵力削減については直ちに施行に移し、今後3年間で8万人が削減されることになる。

■兵力資源の減少で毎年2個師団を削減

 洪楠基(ホン・ナムギ)副首相は6日、経済活力対策会議を開き「(韓国軍)常備兵力を2022年までに50万人水準に削減する」と述べた。洪副首相が同日発表した兵力削減計画は、国防部が昨年発表した「国防計画2.0」の兵力削減計画と同じ内容だ。昨年61万8000人だったわが軍の兵力は1年で約4万人減り、現在は57万9000人だ。政府はまた、現在6.2%の女性軍の割合を8.8%に拡大し、転換服務・代替服務を廃止または縮小する一方、常勤予備役を現役兵に転換配置し、現役の人員を最大限確保すると明らかにした。帰化者の兵役義務化は中期課題として検討することにした。

 これに対し、専門家と軍の一部からは、現在の安全保障の状況と野戦部隊の意見が十分に反映されていないとの指摘が出ている。現在の計画通りに進めば、5年間に陸軍だけで約11万8000人減ることになる。毎年2個師団以上が無くなるわけだ。陸軍の師団は従来の39個から33個に減少し、特に北朝鮮軍と対峙している最前線の師団は11個から9個へと20%減少する。師団ごとの担当戦線が1.2倍ほど増えるわけだ。陸軍の兵力は2022年に36万5000人まで削減され、北朝鮮の地上軍110万人の33%水準まで減ることになる。さらに、服務期間も21か月から18か月(陸軍・海兵隊基準)に短縮されており、兵士たちの熟練度も60%以上弱体化するとの分析だ。政界は若者層の票を意識して軍服務期間を短縮しており、これを再び元に戻す可能性はほとんどない。

 国防部は、無人監視偵察体系など最先端の兵器を増強するとともに、副士官など職業軍人の割合を高め、戦力の空白を埋める計画だ。しかし、無人兵器など最先端の兵器確保が予算確保の問題などで遅延しており、副士官や有給志願兵の確保も期待したほど進んでいない。兵力がこのまま削減されれば、北朝鮮有事の際の安定化作戦のための地上軍兵力も間違いなく不足する。米ランド研究所のブルース・ベネット博士は「北朝鮮の安定化作戦に26万-40万人以上の兵力が必要だ」と指摘していた。

■学齢人口急減にもかかわらず、教員の新規採用継続

 2040年の小・中・高校の学齢人口が、当初予想していた479万人より77万人少ない402万人まで減少すると推算されたことに伴い、政府は教員の需給基準と教員養成体制を改編する計画も明らかにした。ただし教員養成体制をどの程度縮小するかについては具体的規模を提示できていない。昨年発表した「中長期教員需給計画(2019-30)」に従い、当面は既存の需給計画に沿って新規採用を推進するというわけだ。

 教育大・師範大・一般大の教育学科などを評価し、教員養成規模を調整するという案は、すでに実施している政策を焼き直したものだ。しかし、これすらも教育大・師範大などの反発を抑えられず定員を維持する可能性が高いとの指摘が出ている。2017年にも教育大生らが、小学校教諭の選抜定員が急減したことに反発して大規模デモを実施すると、政府は選抜定員の一部を再び増員した。

 政府はまた、細分化されている教師の資格科目を広域化する案を打ち出した。例えば「統合科学」「物理」「化学」「地球科学」「生物」などに分かれている教師の資格を全て「科学教師」とし、その中で専門を別途表示するというわけだ。これに対し、韓国教員団体総連合会のシン・ヒョンウク政策本部長は「科目を細分化して教えていた教師たちの専門性が低下し、教育の質の低下につながる恐れがある」と主張した。

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