全農と農民の寄付金で購入…対北制裁で北に送ることができず4月の行事以降臨津閣に放置

美観を損なうとの苦情受け、先月旧米軍基地に移動させたものの雨に打たれて1台はすでに故障

 全国農民会総連盟(全農)が4月27日に板門店宣言1周年を迎え、北朝鮮に贈る予定だった「統一トラクター」25台(10億ウォン〈約9000万円〉相当)が、京畿道坡州市の旧米軍基地キャンプ「エドワーズ」の敷地内に放置されていることが10月9日、確認された。

 全農は昨年10月から「統一農機械プマシ(野良仕事などきつい仕事の助け合い)運動」を実施して集めた資金で1台当たり4000万ウォン(約360万円)のトラクターを26台準備した。南側のトラクターで北側の農地を耕し、北側の種子などを南側が受け取るといった方法で南北交流の扉を開こうというのが趣旨だった。

 しかし、トラクターは戦略物資として分類されるため、対北制裁が講じられている局面で、国連の許可なしに北朝鮮に送ることができない。北朝鮮にトラクターを送るこれといった手段が見つからない中、全農は今年4月27日、坡州市臨津閣の平和ヌリ公園にトラクターを運び、記念行事を行った後、トラクターをそのまま放置して解散した。

 臨津閣は平日で1000人、週末には3000-5000人の観光客が訪れる坡州を代表する観光地だ。坡州市は「美観を損なっている」とする住民と店舗経営者たちの苦情が相次いだことで、全農側に速やかに撤去するよう要請する公文書を何度か送付した。しかし、全農が引き続きトラクターを放置したことで、坡州市は今年7月末、全農を不法占拠の疑いで警察に通報した。

 全農は警察や坡州市と話し合いを持ち、臨津閣にトラクターを放置してから4カ月後の先月初め、坡州市が所有していた旧キャンプ「エドワーズ」の敷地内にトラクターを一時移動させることで合意した。坡州市は「当敷地は遊休地であるため、警察への通報は取り下げた。今後話し合いを続け、全農側の私有地などに移動させる案を検討中」と説明した。米朝関係が膠着(こうちゃく)している中、全農が北朝鮮にトラクターをいつ送ることができるかは未知数だ。現在トラクターが放置されている場所も、坡州市が一時的に貸し与えた場所であるため、再び移動させなければならないが、適当な場所はいまだ見つかっていない。

 トラクターの購入には、全羅南道霊岩郡、宝城郡、長興郡、京畿道安城市の四つの地方自治体が支援した補助金総額1億ウォン(約900万円)が充てられた。地方自治体の血税までを投入し購入されたトラクターが、雨に濡れながら引き続き放置されているのだ。すでに1台は故障し、全農により回収されたことが分かっている。結局全農が現実性のない事業のために地方自治体と農民から無理な後援を取り付けたと批判する声が上がる。本紙は、全農側の立場を聞こうとしたものの、全農側は取材に応じようとはしなかった。

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