経済総合
月探査また2年延期…遠のく韓国の宇宙開発
2020年末に予定されていた月軌道船打ち上げを韓国政府が2022年7月に延期した。昨年、月軌道船打ち上げ計画を2年、着陸船打ち上げ計画を10年先送りしたのに続き、再び月探査計画を先送りしたものだ。今年に入って中国・イスラエル・インドが相次いで月に向かって着陸船を打ち上げるなど、世界的に見て月探査に対する熱が高まっている中、韓国だけが宇宙開発で後ずさりしているものだ。
科学技術情報通信部は9月10日、国家宇宙委員会の宇宙開発振興実務委員会を開き、「月探査事業の主要計画変更案」を審議・確定して発表した。月軌道船の重量を当初の550キログラムから678キログラムに増やし、軌道船の軌道も1年間の円軌道から9カ月間の楕円(だえん)軌道と3カ月間の円軌道を並行することにした。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時の2007年に月探査計画を発表してから12年経っても、宇宙船の設計や軌道がいまだに揺らいでいるのだ。
■政権によって変わる月探査計画
月探査計画が遅れたのは今回が初めてではない。韓国が政府次元で月探査計画を最初に立てたのは2007年の盧武鉉政権時だった。当時決まったのは、月軌道船は2020年、着陸船は2025年にそれぞれ打ち上げるという象徴的な青写真程度の事項だった。難度の高い月着陸船をすぐに実行するのは難しいので、まず軌道船を打ち上げて月探査の可能性を打診するというものだった。2013年の朴槿恵(パク・クネ)政権では軌道船は2018年までに、着陸船は2020年までに打ち上げ日程を先送りした。「大統領選挙公約に合わせる」という政治的な理由からだった。文在寅(ムン・ジェイン)政権は昨年、再び軌道船打ち上げを2020年に、着陸船打ち上げを2030年に変更した。宇宙開発がスピード競争になっている時代に月面着陸日程が10年遅れるということは、事実上の月探査放棄ではないかという批判もある。「月探査を過去の政権の積弊(弊害)と見なしている」という言葉まで飛び出した。
政府が月探査に消極的なことから、月探査の主体である航空宇宙研究院内部でも混乱が起きている。月探査事業団は昨年ようやく衛星研究本部傘下に入った。月軌道船は人工衛星技術を基礎とするもので、人工衛星専門家との協力が不可欠だ。政府が無関心でいる状況で、開発を主導する航空宇宙研究院内のプロジェクト主導権争いにより、技術開発が事実上、置き去りにされているということだ。その間に部品が追加されて月軌道船の重量が増え、来年の打ち上げを予定通り行うことができない状況に至った。政府は遅ればせながら今年1月になって外部点検評価団を設立したが、その結果、今回重要な設計を変更して打ち上げ日程を遅らせることになった。
月探査費用も増えるものと見られる。当初は来年末までに米国の宇宙船関連企業「スペースX」の「ファルコン9」ロケットを再利用して軌道船を打ち上げる計画だった。だが、軌道船の重量が増えればロケット打ち上げ費用も増える。科学技術情報通信部は「現在、当局・関係者と協議しており、約167億ウォン(約15億円)かかるものと予想している」と明らかにした。このため、当初1978億2000万ウォン(約178億6000万円)だった事業費が2000億ウォン(約180億6000万円)を上回ることになった。
月軌道船の運用軌道が変更となったことから、高解像度カメラや月磁場測定器など5つの機器と、米航空宇宙局(NASA)が開発したカメラなど、搭載機器6つもきちんと活用できるかどうか疑問だ。
■米主導の月ステーション参加も遅々として進まず
ほかの月探査事業も遅々として進まない。政府は昨年、NASAから月ステーション建設に参加するよう要請を受けながら、明確な回答を先延ばししている。科学技術情報通信部は遅まきながら韓国科学技術研究院(KIST)のロボットアームを月ステーションで使う案を推進したが、NASAは国際宇宙ステーションでロボットアームを運用しているカナダと話し合い、事実上拒否した。その後、宇宙インターネット、月資源採掘、宇宙ステーションと月を往復する貨物船などを提案したが、まだこれといった反応がない。これまで航空宇宙研究院がしてきたNASAとの交渉に科学技術情報通信部が直接乗り出したが、具体的な予算投資計画がなく、NASAから懐疑的な反応が出ているという見方もある。建国大学航空宇宙情報システム工学部のイ・チャンジン教授は「これまで月探査には技術的な要素のほかにも構成員間の確執や政治的要因などさまざまな問題があった。宇宙先進国は深宇宙(ディープスペース)開発のための前哨戦として月探査競争に乗り出しているだけに、政権に関係なく月探査事業に関心を払うべきだ」と語った。