日本政府が半導体・ディスプレーの重要素材3種類について、韓国に対する輸出規制を発表してから約50日が過ぎた。うち極端紫外線(EUV)用フォトレジストについては、日本が7日に輸出を許可したが、残るフッ化水素、フッ化ポリイミドについては輸出が許可されたとの情報はない。半導体生産に必須の素材であり、使用量が多いフッ化水素に対する懸念は強い。日本が7月4日に輸出規制を実施して以降、日本製のフッ化水素は1件も韓国の輸入されていない状況だ。

 サムスン電子とSKハイニックスは供給が途絶えたフッ化水素の代替供給を確保するためにさまざまな方策を検討しているが、直ちに生産に投入できる段階ではない。半導体業界関係者は「国内メーカーが生産した液体フッ化水素をテスト中だが、納品可能な量自体が不足しており、フッ化水素の供給難は年末まで続く可能性がある」と述べた。現在半導体メーカーが保有しているフッ化水素の在庫量は2カ月余りの分にすぎないという。日本がフッ化水素の輸出を阻み続ければ、在庫がなくなる10月以降、韓国の半導体産業は打撃を受けかねない。

■液体・気体製品、それぞれ供給多角化

 半導体生産に使われるフッ化水素は液体製品と気体製品という2つの形態がある。液体フッ化水素は微細な回路を刻むためのエッチングと不純物を除去するクリーニングの工程に使われる。気体フッ化水素は半導体ウエハーに薄い膜をかける薄膜蒸着工程に使用する。半導体の工程約500のうち10%に相当する50余りの工程に液体・気体フッ化水素が使われる。気体よりも液体フッ化水素の使用量の方が多い。

 サムスン電子とSKハイニックスは液体フッ化水素と気体フッ化水素の代替供給元を模索している。液体フッ化水素は国内メーカーの製品で代替できる可能性が高い。これまで韓国の半導体メーカーはソウルブレーンなどを通じ、液体フッ化水素の供給を受けてきた。ソウルブレーンは中国製の原材料(無水フッ酸)を精製するか、日本のステラケミファ、森田化学工業などから純度99.999%以上の高純度フッ化水素を輸入し、サムスン電子とSKハイニックスに供給してきた。サムスン電子とSKハイニックスは現在、ソウルブレーンが独自に生産した液体フッ化水素をテストしているという。業界関係者は「多少不良率が高まるとしても、当面はそれに耐え、生産を続けなければならないのではないか」と話した。

 気体フッ化水素が問題だ。サムスン電子とSKハイニックスは気体フッ化水素を日本の昭和電工から全量輸入してきた。気体フッ化水素は使われる量こそ少ないが、工程へと適用や保管が難しい。現在は米国の特殊ガスメーカーと日本メーカーの台湾法人などから供給を受けることが可能かどうか、サンプルを受け取り、テストを進めている。年内に稼働する森田化学工業の中国工場からフッ化水素を輸入することも検討。同時に国産化も推進している。ソウルブレーンは「輸送と保管容器の問題さえ解決されれば、気体フッ化水素の供給も可能だ」と指摘した。SKマテリアルズも年末までに気体フッ化水素の試作品を示す方針を明らかにした。

■年末には解決の糸口か

 半導体業界は素材の国産化と供給多角化を推進しているが、日本製に完全に代替可能かどうか確信できずにいる。半導体業界は当面、9月中旬に最初の判断が可能とみている。半導体ウエハーが工程に入ってから、半導体の最終製品ができるまでには50日程度かかる。サムスン電子とSKハイニックスは7月中旬ごろに日本製以外の素材を投入したテストを開始した。代替品を投入して生産した試作品が出来上がるのは50日が経過した9月中旬ごろになる。

 業界関係者は「新製品がテストに合格しても、直ちに全ての問題が解決されるわけではない」と述べた。代替品があるといっても、生産に必要なだけの物量を確保するとなれば別の話だ。素材メーカーの生産能力が限られているためだ。ソウルブレーンの忠清南道公州工場は現在フル稼働状態だ。日本による経済報復以降、韓国メーカーから供給を増やすよう要求を受けたが、提供できなかった。設備を増設したとしても時間がかかる。ソウルブレーンは9月に第2工場が完成し、稼働を開始するが、第2工場で生産されるフッ化水素が第1工場と同じ品質かどうか、半導体生産に適しているかどうかは再度テストが必要となる。

 年末までに気体フッ化水素の試作品を供給するとしているSKマテリアルズも同様の状況だ。試作品が登場すれば、それをテストして安定化を図り、生産に適用するまで6カ月以上を要する。半導体業界幹部は「結局少なくとも年末か来年上半期にならなければ、日本製フッ化水素の供給支障リスクから脱却できるかどうか確認できない。日本製フッ化水素の供給中断が続けば、韓国の半導体メーカーはしばらく減産、不良率の上昇などの危機に直面しかねない」と述べた。

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