米国のエスパー国防長官は9日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領や韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長(閣僚級)らと会談し、韓米同盟の重要性を強調すると同時に防衛費分担金増額問題を議題として取り上げたことがわかった。エスパー長官は防衛費増額の規模などその具体的な内容については言及しなかったが、防衛費をめぐる政策に対するトランプ大統領の基本的な考え方を何度も強調したという。韓国大統領府のある幹部は「防衛費に関する数字や金額など、具体的な話は出なかった」としながらも、防衛費問題が取り上げられたこと自体は否定しなかった。ある外交官幹部OBは「エスパー長官は文大統領に防衛費政策について大枠で説明し、詳しい内容は鄭室長に別に伝えたのだろう」と予想した。

 韓国大統領府によると、エスパー長官はこの日行われた文大統領との面会で「就任から12日が過ぎたが、最初の海外歴訪先はインド太平洋地域とした」「この地域に平和と安定、そして繁栄のメッセージを伝えたかったからだ」と説明した。エスパー長官は自らのおじが6・25戦争に参戦したことを伝えた上で「共同の犠牲に基づく韓米関係が今後もさらに発展していくことを期待する」と述べた。これに先立ちエスパー長官は韓国国防部(省に相当)の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)長官と会談し「韓米同盟は韓半島と東北アジアにおける平和と安全保障の核心軸(リンチピン)だ」「韓米同盟は鉄のように堅いことを再確認した」などの考えも示した。

 これについてある外交筋は「米国の国防長官が『同盟』や『共同の犠牲』などを強調するのは、防衛費分担金など数々の懸案において韓国により大きな役割を期待するという意味だ」「ホワイトハウスのボルトン国家安保補佐官が先日、鄭室長に防衛費分担金の増額を強く要求してからわずか2週間で、米国の国防政策トップまでこれに加わった形だ」などと指摘した。

 米国務省のオルタガス報道官はこの日、エスパー長官が韓国で会談などを行う直前「在韓米軍の防衛費分担金は(トランプ)大統領のテーマ」と明言した。オルタガス報道官はこの日行われた会見で「(防衛費分担金は)大統領が信じられないほど明確にしてきた問題の一つだ」とした上で上記のように述べた。オルタガス報道官は「(トランプ)大統領の考えにはあいまいなところがない」「(トランプ大統領は)我々の同盟国がより寄与するよう願っていることを語り続けてきた」などとも語った。オルタガス報道官はさらに「防衛費の分担は韓国に関することもNATO(北大西洋条約機構)に関することも大統領のテーマだ」「大統領はすべての国が相互防衛を分担することを願っている」と説明した。エスパー長官来韓の最も大きなテーマが防衛費分担金の増額であることを改めて明確にした形だ。かつて外交部次官を務めた趙太庸(チョ・テヨン)氏は「トランプ大統領は防衛費分担金問題を直接取り扱っているようだ。今回の交渉はこれまでのように簡単にはいかないだろう」と予想した。

 第11次防衛費分担特別協定(SMA)交渉は今月末頃から始まる見通しだ。今月7日にトランプ大統領は「韓国は防衛費分担金をより多く負担することにした」と述べたが、これについて外交関係者の間では「事実上の交渉開始宣言だ」との見方が支配的だ。ワシントンのある外交筋は「米国政府は最近、韓国だけでなく日本やNATO加盟国など同盟国全般の防衛費の現状について全面的に見直そうとしている」「米国は今回の交渉でこれまでとは全く異なる次元の防衛費分担基準を提示するだろう」との見方を示した。

 これに先立ち先月来韓したボルトン補佐官は鄭室長と会談した際、軍需支援費や人件費などからなる従来の防衛費分担金に「適正支援」という新たな項目を追加し、韓国の負担分を大幅に増額する方針を伝えたという。トランプ大統領が今年はじめ「在韓米軍駐留経費は50億ドル(約5300億円)に達した」と言及したこともあり「米国は今年よりも6倍多い費用を提示するだろう」と予想する声もある。今年韓国が負担する額は1兆389億ウォン(約8億6000万ドル)だ。ブルームバーグ通信などは「駐留経費プラス50%」の基準を適用し、およそ「3兆2000億ウォン(約2800億円)」という額を予想した。

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