北朝鮮の食糧難が本当に深刻なのかどうか疑わしいというニュースが伝えられ続けている。国際貿易センター(ITC)の統計によると、今年第1四半期に北朝鮮が中国から輸入した小麦粉などの食料は、タバコや果物よりも少なかったという。小麦粉の輸入額は1644万ドル(現在のレートで約18億1000万円、以下同じ)だったが、タバコは1765万ドル(約19億4000万円)、果物・堅果類は2600万ドル(約28億6000万円)だった。コメなど穀類は180万ドル(約1億9800万円)にすぎなかった。しかも小麦粉の輸入は、昨年第1四半期より40%近く減っていた。逆にタバコ・果物など嗜好品の輸入は年々増えていた。本当の飢餓状態にある人間なら、食料よりタバコや果物を買う方にお金を使うというのはあり得るだろうか。加えて、このところ北朝鮮の市場では、コメの価格が昨年末よりも下がっているという。

 海外の北朝鮮専門家らも、食糧難について留保的な判断を行っている。世界銀行の元顧問は「北朝鮮の貿易統計や市場価格などを考慮すると、まだ食糧難といえるだけの兆しはない。現在の食糧不足は、日照りによる春季の作物に関するもの」と語った。年例のように食料支援を要請してきた北朝鮮が、今回に限っては北朝鮮制裁を食糧難の原因として強調しているのも異常だ。かつて米国務省で北朝鮮人権特使を務めたある人物は、ウォールストリート・ジャーナル紙に「北朝鮮が制裁緩和を引き出すため、住民の苦痛が(外の世界に)浮彫りになるのを望んでいるということもあり得る」と語った。制裁を揺るがそうと、食料問題を誇張しているのではないか-というわけだ。

 現在韓国政権が食糧支援の根拠としているのは、事実上、世界食糧計画(WFP)が発表した「136万トン不足」の推定が唯一だ。しかし、WFPが北朝鮮の事情についてどこまで真実を確認したのか疑わしい。北朝鮮が示したものだけを見てきた可能性がある。そんなWFPが推算した今年の北朝鮮の穀物生産量は490万トン。「苦難の行軍」時代の北朝鮮の生産量は350万トンだった。ニューヨーク・タイムズ紙は「北朝鮮で大量飢餓の問題が発生したという報道は全くない」と伝えた。

 韓国政府は、こうしたニュースにまるで耳を貸さない。北朝鮮支援で南北イベントをあらためて開いてみようという考えあるのみだ。韓国大統領府(青瓦台)安保室長は17日、「北朝鮮への食糧支援の原則をすでに確定した」と明かした。国家安全保障会議(NSC)の常任委員会まで開き、「国際機構を通した支援もしくは直接支援など、具体的な計画を検討する」とした。食料支援とは別に人道的支援にも800万ドル(約8億8000万円)を拠出するという。北朝鮮が相次いでミサイルを発射しているのに食料を与えたら、それは北朝鮮にとってどのようなシグナルとなるか。全てのことには「タイミング」がある。今の時点では、北朝鮮の食糧事情を正確に把握し、北朝鮮制裁の状況に食糧支援が及ぼす影響を細かく調べてみるべきだ。

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