「まだ知られていない被害が出る可能性ある」との主張が受け入れられる

WTO「日本産水産物輸入禁止、差別ではない」一審で敗訴も二審で勝訴

日本「原則ない判決」と反発…安倍首相、水産庁長官呼び対策会議

 「福島原発事故が起きた日本の魚が食卓に上るのではないか」という心配を今後はする必要がなくなった。世界貿易機関(WTO)上級委員会は12日、「韓国が福島県など日本の8県の水産物を輸入禁止にしている措置はWTO協定に違反していない」と韓国側勝訴の判断を下した。WTOの紛争解決手続は二審制だが、韓国は昨年2月の一審(紛争処理小委員会〈パネル〉)で負け、今回の最終審(上級委員会)で勝った。韓日が4年間にわたり貿易紛争を繰り広げてきた結果だ。韓国政府は同日、「WTO上級委員会における今回の判定により、日本に対する現行の輸入禁止措置は変更されることなく維持される」と明らかにした。

 日本の安倍晋三首相は同日、水産庁長官や外務省の担当者を首相官邸に呼び、対応策を協議した。自民党も対策会議を開いた。外務省幹部は日本のメディアに「一審が覆ったのは通常はあり得ないことだ」と言った。朝日新聞は「日本、誤算の敗訴」と報道した。

■日本産水産物の輸入禁止維持

 2011年の福島原発事故直後、韓国は福島県など日本の8県の水産物50品目を輸入禁止にした。その後、13年に原発事故復旧現場で放射能汚染水が海に流出していた事実が報じられると、輸入禁止品目を8県の水産物すべてに拡大した。日本はWTO協定が禁止している「不当な輸入制限措置」に該当するとしてWTOに韓国を提訴した。サバ・タラ・ホヤなど14年以降、放射性物質が基準値を上回る数値で検出されていない28品目について輸入禁止を解くべきだという訴えだった。

 一審で、日本は膨大なデータを根拠にして、「水産物におけるセシウムなどの放射性物質は安全基準を上回る数値で検出されたことがない」と主張した。韓国は「水産物だけでなく、海洋や土壌など、我々がまだ知らない、いかなる被害が発生するか分からない」と対抗した。

 一審は日本が勝った。WTOは日本産水産物の放射能検査数値が他国とほぼ同じなのにもかかわらず、日本産水産物のみ輸入を禁止するのは「恣意(しい)的差別」だと判断した。だが、上級委員会は韓国の勝訴とした。韓国産業通商資源部(省に相当)のキム・スンホ新通商秩序戦略室長は「一審では放射能の数値だけで判断したが、二審では『食品汚染に影響を与え得る日本の特別な環境的状況なども考慮しなければならない』と判断した」と語った。

■日本の水産物輸出戦略に支障

 西江大学のホ・ユン教授は「日本政府は科学的に水産物の安全性を十分に立証していたので、今回の判定は意外だ」と言いながらも、「主権国家の食品衛生に対する裁量権を幅広く認めたものとだと見られる」と分析した。ただし、「今回の判定で日本産水産物の輸入が引き続き禁止されることで、韓日関係の行き詰まりが長引く恐れがある」との見方を示した。

 日本経済新聞は「WTO一転『玉虫色』判決」と報道した。玉虫のはねの色が光の具合によって変化するように、見方によって解釈が変わるということだ。日本が出した科学的データに反論はしていないが、法理を見極めて韓国側の手を挙げたということだ。

 福島原発事故直後、54カ国が水産物をはじめ日本産食品の輸入を規制したが、このうち31カ国が規制を解除した。日本は残り23カ国のうち、戦略的なことを考えて韓国だけをWTOに提訴した。韓国に勝訴した上で、これをもとに残りの22カ国に圧力を加えようという戦略だった。河野太郎外相は同日、李洙勲(イ・スフン)駐日大使に会い、「日本の立場に変わりはない。今後、両国の協議を通じて輸入禁止撤廃を要求する」と述べた。しかし、実際には「日本の既存戦略に支障が出るのは避けられなくなった」という見方が日本国内でも出ている。

■法理闘争で逆転勝ちするも、不十分な点あった

 WTO上級委員会の特性も韓国側の助けになった。一審は事実関係を中心に判断したが、上級委員会は主に法理を調べる。韓国食品医薬品安全処(省庁の1つ)関係者は「関連資料を追加するよりも、以前の判定が偏っていたということを示すことに重点を置いた」とした。勝訴したものの、果たして政府の対応が緻密(ちみつ)だったのかどうかは疑わしいという批判もある。

 今回の判定が出るまで、韓国政府内でも「韓国は負けるだろう」という見通しが大勢だった。WTO上級委員会の判定を目前にして、駐日韓国大使館の食品医薬品安全官(食品医薬品安全処職員)のポストは1カ月以上空席になっていた。該当職員は政府の規定上、必要な語学成績に達せず2月末に一時帰国していたが、8日から駐日韓国大使館に勤務している。

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