妊娠中絶薬をネット上で違法取引しようとして摘発された件数が2013年の514件から昨年は2197件と、5年で4倍に増えた。覚醒剤や興奮剤、ステロイド剤、勃起不全治療剤のようなその他の薬品の違法取引の摘発件数も共に増加し、同期間で全医薬品の違法取引摘発件数が1万8665件から2万8657件へと1万件近く増えた。2月22日に食品医薬品安全処(日本の省庁に当たる)=以下食薬処=が国会のキム・サンヒ議員室に提出した資料だ。

■人工妊娠中絶の処罰強化で妊娠中絶薬の違法取引が増加

 食薬処がネット上での取引を常時摘発し、サイトを遮断しているものの、全ての違法医薬品取引を根絶することは難しい状況だ。

 最も問題となるのは妊娠中絶薬だ。保健社会研究院の調査によると、妊娠中絶件数自体は減少傾向を示している。人口1000人当たりの妊娠中絶件数を示す「人工妊娠中絶率」は、2005年の30%から11年には16%、17年には5%にまで低下した。年間を通じた人工妊娠中絶件数も、同期間に34万件から17万件、17年には5万件と減少した。専門家たちは「避妊実践率と応急(事後)避妊薬の処方件数が増えた上、15-44歳の女性人口が減少したため」と説明した。しかし、全体的な流れがそうであるだけで、願ってもいないのに妊娠してしまう人がいなくなったわけではない。これまで韓国では、妊娠中絶が法的には違法だが、現実には幅広く行われてきた。これによって宗教界を中心に「違法の妊娠中絶が幅を利かせている」との批判が高まりを見せると、2016年に福祉部(省に相当)が違法妊娠中絶に対する取り締まりを強化した。

 妊娠中絶薬を違法で購入しようとする人が増え始めたのは、まさにこの時点だ。妊娠中絶薬の違法取引摘発件数は2016年まで減る傾向にあったが、16年を機に1年で900-1000件も増えた。米国やフランスなどでは、妊娠中絶薬が合法的に使用されているが、こうした薬品が韓国国内では「海外直接購買」などの形で流通しているのだ。

■違法な妊娠中絶薬、処方なしに服用すれば健康に悪影響

 しかし、西欧で幅広く使われている薬だとしても、韓国国内の消費者が医師の処方なしに服用すれば、健康に大きな影響を及ぼすことがある。

 違法か合法かを別にして、医療陣は女性たちの安全と健康を危惧する。最も多く摘発された妊娠中絶薬の一つがフランスの製薬会社の開発したミフェプリストン(mifepristone)だが、この薬は妊娠7週を迎える前に使用すれば90%の確率で中絶できる。しかし、薬を飲んでも中絶できなければ、追加で手術を受けなければならない。盆唐車病院産婦人科のチャン・ジヒョン教授は「大量出血や子宮内の残余物による感染が懸念されることから、医療機関で診察を受けながら使わなければならない薬品だ。個人が自ら購入して使えば危険の恐れがある」と警鐘を鳴らす。

■ステロイド剤も危険

 妊娠中絶薬ほどではないが、違法取引が急増している薬は体の成長を助けるステロイドだ。ステロイドの違法取引の摘発件数は2013年の146件から昨年は600件と、5年間で4倍になった。

 男性がステロイド系列の薬品を服用すると、体は「男性ホルモンが体内に多過ぎる」と判断する。これにより、睾丸(こうがん)の機能が低下して精子の産生能力も低下。不妊などの副作用が生ずる恐れがある。医療機関で患者の体調をチェックしながら使用しなければ、副作用を招く恐れのある薬品なのだ。

 また、ステロイドの副作用として睡眠無呼吸症が生じたり、「赤血球増殖症」で血に粘り気が生じたりするなど心血関係で問題が生じる恐れもある。

■勃起不全治療剤、死亡を招く恐れも

 一時、「違法取引摘発件数」で1位だった早漏・ED(勃起不全)治療薬は購買件数が減った。2014年の6949件から17年には1万2415件と摘発件数が引き続き増加したものの、昨年は1万77件へと減ったのだ。以前はバイアグラ(2012年)やシアリス(2015年)といった早漏・ED治療薬が比較的高価だったが、こうした薬品の特許期間が終了し、比較的安く後発薬剤が大量に発売されるようになったことから、闇取引に手を出す理由がなくなったものと思われる。勃起不全治療薬の場合、成分含量が一定でないため、誤って服用すれば一大事を招くことになる。

 むしろ、勃起不全治療成分が一切含まれていないか、含まれていても少量である「偽薬品」なら危険性は少ないが、成分過多の薬を服用する場合、生命に危険をもたらす可能性がある。

 ソウル聖母病院泌尿医学科のペ・ウンジン教授は「勃起不全治療薬は末梢血管の拡張作用を通じて勃起不全を解決するが、当該成分が決められた量よりも多く含まれている場合、心血関係に副作用をもたらし、死亡に至る恐れもある」と説明した。

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