2017年8月26日朝、江原道旗対嶺一帯で北朝鮮の短距離発射体が3発発射され、北東方向の東海(日本名:日本海)に250キロメートル飛んだ。

 ところが、この発射体の正体をめぐって韓米の分析は食い違っていた。韓国軍は300ミリメートル改良型放射砲(多連装ロケット砲)と推定したが、米国は短距離弾道ミサイルとの見方を示した。

 この発射体は後にミサイルだったことが判明したが、疑問が残った。この時の発射体をミサイルだとするには飛行高度が非常に低かったためだ。この発射体は最大飛行高度約40キロメートルを記録したが、一般的な弾道ミサイルだったら最大飛行高度70-80キロメートルになるのが普通だ。

 一方、300ミリメートル放射砲だったとしても、従来の最大射程距離(200キロメートル)より50キロメートルも遠く飛んだことが疑問として残る。

 この謎は5カ月後の昨年2月に行われた北朝鮮の朝鮮人民軍創設記念日閲兵式である程度解けた。従来のKN-02「毒蛇」ミサイルとは異なる新型短距離弾道ミサイルが初めて登場したのだが、ロシア製短距離弾道ミサイルSS-26「イスカンデル」そっくりだったのだ。

 イスカンデルは280キロメートル飛んでも最大飛行高度は約50キロメートルに過ぎないという。落下速度が音速の10倍に近く、韓米両国軍のパトリオットPAC-3ミサイルでは迎撃不可能で、飛行高度が低いため在韓米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)でも迎撃が難しいとされる。480-700キログラムの弾頭が搭載可能で、北朝鮮が開発した核弾頭も搭載できるものと見られている。

 今、国内外の関心はすべて27日と28日にベトナムのハノイで行われる2回目の米朝首脳会談に注がれている。しかし、会談の議題にこのような新型短距離ミサイルをはじめとする北朝鮮の中距離・短距離ミサイルの廃棄問題が含まれているという話は聞こえてこない。

 外信の報道や専門家らの分析によると、今回の首脳会談は核凍結などの非核化と核兵器の運搬手段である大陸間弾道ミサイル(ICBM)廃棄に重点が置かれる見通しだという。

 だが、韓国としては、中距離・短距離ミサイル廃棄も核廃棄と共に推し進めなければならない課題だ。北朝鮮が保有している約1000発の弾道ミサイルのうち、80%以上がスカッド(約600発)とノドン(約200発)だ。スカッド(射程距離300-1000キロメートル)は韓国を、ノドン(射程1300キロメートル)は日本(在日米軍基地)を主に狙っている。このミサイルに核弾頭を搭載するのは、ICBMに搭載するより簡単なことだ。韓国軍消息筋は「スカッドやノドンにはICBMよりも大きな核弾頭を付けることができるので、搭載はもっと簡単だ」と話す。

 しかも、スカッドやノドンは化学兵器も運ぶことができる。北朝鮮は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏毒殺に使用されたことで知られる神経ガス「VXガス」をはじめ、さまざまな化学兵器2500-5000トンを保有する世界第3位の化学兵器大国だ。軍内には、北朝鮮のスカッドB・Cミサイルの30-40%が化学弾頭だという見方もある。米軍の分析によると、スカッドB(射程距離300キロメートル)1発に560キログラムのVXガスを搭載してソウル中心部に投下すれば、最大12万人の人命被害が生じる可能性があるとのことだ。

 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)がこのほど、黄海北道黄州郡サッカンモル、咸鏡南道虚川郡上南里など中距離・短距離ミサイル基地問題を相次いで取り上げたのも、こうした脈絡から見るべきだろう。

 問題は、米国に、特に韓米同盟の価値認識が非常に薄いトランプ大統領に、北朝鮮の中距離・短距離ミサイル排除まで期待するのは難しいのが現実だということだ。のどが渇いた人が井戸を掘らなければならないのと同様に、韓国が積極的に出るしかない。しかし、現政権の行動を見た時、核凍結やICBM廃棄程度のことを「完全な非核化の成功」のように装うのではないかと懸念される。

 完全な非核化とは、核施設・核物質・核兵器・核関連人材の廃棄・転換だけでなく、運搬手段であるミサイル廃棄まで含めなければならないことを肝に銘じ、これについての交渉も急がなければならない。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者・論説委員

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